【インビザラインのすすめ】始める前に理解してほしい!インビザラインのほんとのところ

インビザラインは、マウスピース型の矯正治療装置です。透明で目立たず、食事や歯磨きの時は取り外せるので清潔を保ちやすいため、あっという間に世界中に広まり、今では圧倒的なシェアを誇ります。

多くの歯科医院がインビザラインを取り入れるようになったことで、「思い切ってずっと気になっていた歯並びを直してみようかな」と思っている方も増えたかもしれません。それと同時に、インビザラインを使用する上での注意事項をしっかりと理解しないまま始めることで、トラブルに発展することも歯科業界全体で危惧されています。

今日は、当院でも取り入れているインビザライン矯正治療で、患者さんに必ず理解していただかなければならない注意事項をまとめてみたいと思います。

Contents

マウスピース型矯正って何?

まずはマウスピース矯正のいろはから。
マウスピース型の矯正装置は1997年にアメリカで設立されたアライン・テクノロジー社によるインビザラインが先駆けとされ、その後ヨーロッパや日本など、世界で多くの類似したアライナー矯正システムが誕生しています。

一人ひとりの歯に合わせて作製される透明なマウスピース型装置(アライナー)を装着し、治療の段階に合わせて新しいアライナーに交換しながら徐々に歯を動かして、歯並びを矯正します。

 

日本だけでも、似たよううなマウスピース型矯正装置は多く開発されていて、「アソアライナー」、「ホワイトライン」、「クリアコレクト」など、日本国内で利用されているものだけでも20種類以上あって、違いがわからず迷ってしまうほどのバラエティと費用設定があります。

先駆けであるインビザラインが日本に「輸入」されて正式に販売開始されたのが2006年。当初は一本一本の歯にブラケットと呼ばれる器具をワイヤーをつけて行う従来法の矯正治療に比べて、治療がうまくいかない、適用症例が限られるなどの欠点を指摘されていました。

しかし、世界中に受け入れられて多くの症例のデータが集まり、改良が重ねられたことで、現在ではマウスピース型矯正装置の中では、インビザラインがもっとも信頼性が高いと言われています。もちろん、目的や歯並びの程度によって、他のマウスピース型矯正システムをうまく取り入れることも問題はないと思います。

インビザラインを行う上で必ず知っておいてもらいたいこと

インビザラインの人気の秘密は何といっても「目立たなさ」。さらに、食事や歯磨きの時は外せるので、食事も楽しめるし、他の装置のように歯磨きがうまくいかなくて虫歯になることもありません。

いまやマウスピース矯正の優等生として、矯正治療に革命を起こしたインビザラインですが、始める前に必ず以下のことを確認してください。「え、こんなんだったら、やるんじゃなかった」そうやって続けられなくなってしまえば、大切なお金も将来の素敵な歯並びも、ドブに捨ててしまうことになります。

写真はインビザラインジャパンホームページより

インビザライン矯正を始める前に、全ての方にご理解いただきたい点は以下の通り。

1。何はなくとも。装着時間を守る

何はなくてもこれが一番大事。インビザラインの装着時間は20時間以上(できれば22時間)。つまり、食事と歯磨き以外は常につけている必要があります。水以外のものを飲んだり食べたりする時は外さないといけないので、面倒になって間食が減り、歯並びの他にダイエットにもなった、というお話もありますけどね。

2。サボりがちNo1。装着するたびに、まず「チューイー」

これは、上記の「時間を守る」と同じくらい大切です。硬いスポンジのような「チューイー」と呼ばれるものを、装着後に噛んで、アライナーをしっかり歯に適合させます。最低3往復、時間に余裕のある時は5分ほど噛み噛みしてください。

chew(噛む)という単語からきているこのチューイー、名前も可愛いので、ぜひお友達にしてください。

3。歯が削られる!?IPR(Interproximal Reduction: 歯間の切削)を理解する

これは、インビザラインに限ったことではないのですが、歯を動かす隙間を作るために、歯と歯の間をほんの少しだけ、専用の機械で切削します。これは、最大でも歯の表層にあるエナメル質の厚さのほんの一部分。もちろん痛みもありませんし、歯を痛めることもありません。

研究の中で最もエビデンスが高いとされているシステマティックレビューでは、IPRで歯や歯肉に悪影響を及ぼすことは全くないとされてますし(*1)、むしろ、歯をほんの少し切削することで、唾液のカルシウムにより再石灰化が促され、歯が強くなる可能性も高い(*2)という研究もあります。僅かとはいえ、歯を削ることが心配な方も、安心して受けていただくことができます。

4。油断大敵。食事の際のお約束

必ず外して食事をします。つけたままとっていいのは水やお茶のみ。飲み物ならいんじゃない?と思われるかもしれませんが、コーヒーなどの着色性のものや、甘い飲み物にはいっている糖分が歯にずっと付着することになり、虫歯の危険が高まります。

5。自分で管理することがたくさん

食事や歯磨きのたびに取り外して、また装着しチューイーを噛む。これだけでも、結構な手間です。さらに、歯並びの状態によっては、上あごと下あごの間に「顎間ゴム」というゴムをかけてもらうようお願いする場合があります。これも、食事のたびに外したりつけたりする必要があります。

6。矯正期間は多めにみましょう

最初の計画で、アライナーの数が20枚(1週間に1度の交換で5ヶ月)の予定だったとしても、かならずあるのが「追加アライナー」です。初めの検査の際に、ごくおおよその期間を教えてもらえることもありますが、正確な予測は不可能。かならず「軌道修正」や「仕上げ」のための追加のアライナー製作が必要になり、ごく軽度の方を除いて、1〜3回ほどの追加アライナー製作が必要になるのが普通です。

期間は個人差がありますし、上に述べたお約束をしっかり守ってくれるかどうかも期間を大きく左右します。

一年前後でめどがつく方も多いですが、軽度の方でも4〜6ヶ月ほど、難しい方であれば2年半から3年ほどの期間が必要になることもあります。「従来型」の矯正治療に比べて、大きな期間の違いはないと言われていますが、インビザラインの方が若干期間が長くなる傾向があるという意見もあります。

7。「保定」までが矯正治療です

矯正治療に必ずついてくるのが、治療終了後に後戻りを防止するために行う「保定」です。最低でも3年間、できればもっと長い間、「保定装置」の装着をお願いします。初めの6ヶ月〜1年ほどは治療していた時と同じ「20時間以上」。その後は、夜間のみの装着でよくなります。

まとめ

インビザラインが急速に広まって、一般の方の目につく機会も増えてきました。インビザラインや他のマウスピース矯正の良いところにばかり目がいくこともあるかと思いますが、利点があれば欠点もあるのが世の中の常。

マウスピース矯正に興味を持って、始めてみようかと思っている方は、必ず上記をはじめとした「理解していただきたいこと」をしっかりと確認し、信頼できる歯科医師とともに納得して始めていただきたいと思います。

美しくなるにはある程度の努力が必要。インビザライン矯正も、例外ではありません。でも、努力の先には、必ずや今までとは違う未来が待っていることは、間違いありません。

*1 Gómez-Aguirre, J. N., Argueta-Figueroa, L., Castro-Gutiérrez, M. E. M., & Torres-Rosas, R. (2022). Effects of interproximal enamel reduction techniques used for orthodontics: A systematic review. Orthodontics & craniofacial research25(3), 304–319.

*2 Brudevold, F., Tehrani, A., & Bakhos, Y. (1982). Intraoral mineralization of abraded dental enamel. Journal of dental research61(3), 456–459.

 

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