雨を喜び、風を楽しむ 〜第131回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖〜

「歯科医師夫婦のつれづれ手帖」は、2010年から歯科医院を営む夫婦が、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年より院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。2024年4月の移転後も、なんだかんだ言って続いています。

ルールは2つだけ。

ルール1 必ず毎月、どちらかが書く
ルール2 内容は、歯科治療以外のこととする(時々ルール違反あり)

 

第131回 雨を喜び、風を楽しむ


伝説的な野球人・長嶋茂雄さんの訃報が伝えられました。

私が小学1年生のときに引退されているので、現役でプレーする姿をはっきりと記憶しているわけではありませんが、父にとっては、まさに“スーパースター”だったようです。

「長嶋は、打ってほしい場面で必ず打ってくれたんだよ!」と、ナイター中継を見ながら話していました。

あの時代の多くの人にとって、長嶋さんはただの野球選手ではなく、時代の象徴だったのだと思います。

訃報のニュースを目にしながら、ある逸話を思い出しました。

ある日、親しい記者に「『雨ニモマケズ風ニモマケズ』って知ってる?」と問いたとのこと。

「それじゃあ人生つまらないよな。せっかく降ってくれてんだから雨を喜び、吹いてくれてんだから風を楽しむほうが人生楽しいでしょう」と微笑んだというお話です。

なんとも長嶋さんらしい前向きさがにじみ出ています。

確かに、困難や逆風を「我慢」するだけでは、心がすり減ってしまうこともあります。

歯科医療も、時には思うようにいかないことや、予期しないトラブルに直面することがあります。

そんなとき、「雨の中でも楽しく過ごす」「風に吹かれても笑っていられる」、そんな心の余裕を持ちたいものだと思います。

長嶋さんは、名言・迷言の多い方だったようですが、その言葉の裏にある前向きなエネルギーと、ユーモアと愛嬌にあふれる人柄に、改めて感心させられます。

さらに彼のすごさは、華やかなイメージの裏に隠された努力の積み重ねです。

誰よりも早くグラウンドに現れ、黙々と素振りを繰り返す。

目立つプレーの裏に、決して表には出ない努力と準備があったことを知るにつれ、彼が多くの人の心をつかんだ理由がわかるような気がします。

患者さんと向き合う私たちの仕事も、派手な技術や知識だけでなく、地道な準備や、日々の学び、そして人としての信頼関係の積み重ねが何より大切だと感じます。

「雨を喜び、風を楽しむ」。少し肩の力を抜いて、目の前の出来事を味わってみるのもいいかもしれません。これからもそんな心持ちで、患者さんやスタッフ、そして日々の仕事に向き合っていけたらと思っています。

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