第5回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖〜現実を受け入れるということ

歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、歯科医院を共に営む夫(真面目なのでここではマジオ君)とともに、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年から書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 必ず毎月、どちらかが書く。
2 内容は、歯科治療以外のこととする。

回想版:末息子が初めて飼ったペットと辛い別れを経験。密かに私も夫もかなり精神的に参った話。

昔猫をたくさん飼っていて、ペットと別れる辛さを知っている私は、それまで家で動物を買うことはありませんでした。しかし、末息子の懇願に負け、ハムスターを飼い始めて1年ほど経った頃。。。飼育カゴの部品の一部が顔にささってしまうという不慮の事故で、突然の別れがやってきました。

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のあみ

病気でも老衰でもなく、事故での別れ。私たちは自分を責め、仕事も手につかないほど落ちこんだな〜。

初めてのペットを失った息子の悲しみはそれ以上。授業中もずっと泣いていたと、あとから担任の先生に聞きました。

この話は患者さんからの反応も大きく、ペット愛あふれる人たちが多いことに驚きましたね〜。

現実を受け入れるということ〜歯科医師夫婦のつれづれ手帖Vol 5〜

先日帰宅すると、電話する妻の脇で小2の息子が号泣していた。聞けば「飼っているハムスターが怪我をして元気がない。」とのこと。詳細は控えるが、顔面に傷を負っており平衡感覚も障害されている様子。エサをそばにおいても食べられないようだ。

息子は「お医者さんに早く連れて行こう。」と言うのだが、私の見る限り有効な治療が出来る状態ではない。時間外にも関わらず電話応対してくださった獣医さんからも、「周りを暗くして、静かな環境でそっとしてあげて。」との指示を頂いた。その晩は、家族全員言葉少なく、祈りながら眠りについた。

翌朝、目覚めた私は、おそるおそるゲージに被せていた布を外した。はたしてその小動物は、ゲージの隅で冷たくなっていた。息子の落胆を思い、「朝一番で病院に連れて行き、今は入院している。」と話そうか?と、一瞬考えた。だが、あえて真実を告げることにした。

話を聞き飛び起き、静かに横たわる姿を確認した息子の目からは、とめどなく涙があふれ出した。「怪我したまま、長い間苦しまずにすんだのだ。みんなでかわいがったのだから、天国でも楽しく過ごせるはず…。」と諭すしかなかった。そして、長男も加え3人で、裏庭の木のもとに埋葬し両手を合わせた。「天国に着くまでお腹がすかないように。」と、エサもお供えして。

生きている限り、楽しいことばかりではない。子供に降りかかる火の粉をふり払い守るのは親の役目だ。一方、つらい出来事に直面した際、それを現実として認識させ共に苦しみ、乗り越える手助けをすることも大切だと思う。

毎朝息子は、裏庭にまわってお祈りしてから登校している。いまだ悲しみは癒えてはいないが、息子なりに考えやっていることである。(2014年 MDCニュースレター11月号 文責:まじお)

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