医療ホワイトニングとセルフホワイトニング。特徴を理解して賢く利用しよう。

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

医療ホワイトニング(歯科医院で行うオフィスホワイトニング)は、少しずつ進化を遂げています。

少しずつ、と言ったのは、過酸化水素を使用する医療ホワイトニングに用いられる製剤は、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)による厳しい審査があり国内での認可がおりるのに時間がかかることや、大手の歯科材料会社がすでに何種類かのホワイトニング剤を出しており、飽和状態にある点などもあいまって、どんどん新しい製品がでるという市場ではないからなのかもしれません。

しかし、ここ数年で、米国に本社を置く「ウルトラデント社」の「オパールエッセンスブースト」、そして日本のホワイトエッセンス社の「ホワイトエッセンスプロ」が立て続けに承認を得ました。どちらも製品としてはとても素晴らしく、効果と安全性が考えられていて、審美歯科医師としては大いに期待しているところです。

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医療ホワイトニングと、セルフホワイトニング

あえて「医療ホワイトニング」という言葉を使ったのには訳があります。

いまや、歯科医院でのホワイトニングはもとより、エステサロンや、街中のホワイトニングサロンなどでも「ホワイトニング」が受けられるようになり、一般の人たちにとってはその違いがわからないのではないかと思います。

審美歯科や予防歯科の第一歩として、歯に強い意識を向けるホワイトニングは本当に意義のある治療であり、ホワイトニングを受けることで「予防歯科」に興味を持ってもらえるのであれば、その入り口が歯科医院での「医療ホワイトニング」であっても、ホワイトニングサロンでのセルフホワイトニングであってもいいと思います。

しかしその違いについては、ちょっとだけお話しておきたいと思います。

歯科医院でなければ受けられないホワイトニングは、過酸化水素が入っていることが1番の特徴で、その過酸化水素の力を、歯に負担かけることなく引き出すようなさまざまな製剤が加えられています。

たとえば、セルフホワイトニングで「ホワイトニング成分」として使われていることが多い「酸化チタン」。これは光触媒といって、ある種の光を当てることで、活性酸素を作り出し、着色などの汚れを浮かせて落としやすくするもので、歯の内部から漂白する力はありません。セルフホワイトニングは、着色汚れなどの歯の表面の汚れを取り除くことで、歯を本来の色に戻していく、と考えるべきかと思います。

医療ホワイトニングの中にも、「酸化チタン」を入れている製品がありますが、これはあくまでも、ホワイトニング成分の基本の基本、「過酸化水素」の力を引き出すために添加されているものであり、酸化チタンそのものがホワイトニング効果を発揮するものではありません。しかも、現在では、酸化チタンの「光触媒効果」も期待できない、ということがわかってきて、ホワイトニング王国アメリカでも、光触媒(酸化チタンなど)を添加したホワイトニング製剤は、現在まったく主流ではなくなってきています。

安いホワイトニングは、結局お得なのか。

セルフホワイトニングは、確かに安いです。

歯科医院でのオフィスホワイトニング(過酸化水素を使った医療ホワイトニング)は、1回につき数万円することが多いです。
それに対しセルフホワイトニングは、一回4〜5千円という安さ。

私はセルフホワイトニングを受けたことはないので、その「効果のほど」はよくわかりません。理論上、歯を本来の白さ以上に白くする効果はないと思われます。もしかしたら、微細な着色を浮かせて本来の白さに近づける効果はあるのかもしれません。

しかしですよ・・・

着色を浮かせて本来の歯の白さを取り戻す。これは・・・歯科のメインテナンスクリーニングで普通にされていることです。

歯科医院でのメインテナンスクリーニングは、3割負担の方で約3000円。

当院ではエアフローというメインテナンス機種で、着色やバイオフィルムを綺麗に落とし、その上歯科衛生士による歯磨きの指導や、歯の検診をしています。

どちらがご自分の歯の健康のために良いことであるかは、一目瞭然でしょう。

セルフホワイトニングの使い方があるとすれば、普段きちんと歯科に定期メインテナンスに行っている方が、結婚式や友人との会食などのイベントの前にちょっとしたケアとして利用する、という程度でしょうか。

正しい知識と、柔軟な利用を

セルフホワイトニングに「本来の」ホワイトニング効果が見出せないからと言って、私はセルフホワイトニングを否定はしません。

むしろ、このような業態が広がってきたことで、今まで歯に興味のなかった方々が、歯科に興味を持ち、思い切って歯科への扉を開けてくれるきっかけになるのではないかと期待しています。

その意味でも、セルフホワイトニングを提供している企業が、「ただただセルフホワイトニングをくりかえすのではなく、歯科での検診もおこなうように」啓蒙していただけるとありがたいなと思います。

そして、冒頭でお話した医療ホワイトニングは、「本来のご自分の歯の白さ」以上を目指すことができることは、お知らせしておきたいと思います。

誤解してもらいたくないのは、医療ホワイトニングであっても、一回行っただけで劇的な白さになる、というものではないということ。しかし、歯科医師や衛生士の指導のもと、適切に繰り返すことで、誰が見ても「白く美しい」歯は、実現可能ですし、継続可能なのです。

60代でも、70代でも、ホワイトニングで年齢を感じさせない自然な、でも驚くほど白い歯を保っている方はいらっしゃいます。それが、歯科メインテナンスと、医療ホワイトニングの組み合わせが起こす一種の奇跡なのかもしれません。

まとめ

歯の色は、やはりとても外見を左右します。歯が白くなっただけで、お顔全体が若々しく、清潔感満載になるのは、誰もがうなづくところでしょう。白い歯、それも、人工的な不自然なものではなく、自然な、それでいてとても白い歯は、いくつになっても実現可能です。

しかしそれには、ホワイトニングの継続と、定期的なエアフローメインテナンスの併用は不可欠。

数ヶ月に一回の医療ホワイトニング(歯科医院で行うオフィスホワイトイニング)で、それが叶うのであれば、忙しいかたや、面倒くさがりの方でも多分続けてもらえるはず。本当に、良い時代になったものだ、と面倒くさがりの私はとても嬉しく思っています。

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