【ペリオ大学】歯周病をやっつけろ!歯磨きの「合格点」とは?

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

「ペリオ」とは、歯科用語で「歯周病」の意味。

このブログの【ペリオ大学】は、この歯周病について、わかりやすくお話するシリーズです。

今回は、前回のペリオ大学で触れた「歯ブラシ」の話題に引き続き、歯ブラシでどのくらいの「合格点」を目指せば良いのか、というお話をしたいと思います。

歯周病治療の要、歯ブラシの選び方を書いた前回のペリオ大学の記事はこちらから。

歯周病患者がまずは知るべきこと

私が持っているある信頼できる専門書には、「歯周病治療の成功の最大の秘訣は、患者さん自身が正しい知識を身につけること」とあります。

この考えは非常に大切ですが、同時に、臨床家にとっては非常に難しいことです。

「最近引っ越してきたので検診してほしい。今までも、3ヶ月ごとに定期検診に行っていました」と当院にいらっしゃる患者さんの口の中をみてみると、歯と歯茎の境目にはプラークがたまり、明らかに磨けていないところが多かったりします。

おそらく、「定期メインテナンスに通う」という行動変容を起こしてもらったところまでは前医は成功したので、それは素晴らしいのですが、逆に3ヶ月ごとに歯科医院に通うことで患者さんは油断をして、セルフケアがおざなりになってしまっているのです。

実は当院にもそのような方は一定数いらっしゃいます。まずは来てもらうことが大切、ではありますが、歯科衛生士にみてもらうことが習慣になったら、次はやはり「プラークスコア」を減らすことに注力することが必要になってきます。

前回のブログで、自分で80%落とせることを目標に、と話しました。しかし、自分では50%くらいにしておいて、あとは歯科医院でやってもらおう、と言う「他力本願」の考えの方もいらっしゃることも確かです。そのような方は残念ながら、歯科医院に通っているにもかかわらず、なかなか出血が無くならなかったり、歯周病も改善せず、少しずつ悪化していきます。

歯周病患者が目指さなければいけない歯磨きの合格点

もう答えはでていますね。そう、合格点は80%。

「自分が何点なのかを、どうやって知るのか?」と思う方もいらっしゃるでしょう。答えは簡単。

歯科医院に行くと、プラークを赤く染め出されたこと、ありますよね。あれ、嫌いな方も多いので恐縮なのですが、当院では毎回染め出しをしています。染め出しは、歯磨きの指導に使う、ということもありますが、本当の目的は「歯磨きのダメ出し」ではありません。

最も大きな目的は、「プラークスコア」を出すことと、「染め出されたバイオフィルムを間違いなくちゃんと落とすため」。そう、歯科医師や歯科衛生士が自分の仕事のためにやっているのです。

プラークスコアは、全ての歯のだいたい何%が染め出されたか、という記録。80%磨けている方であれば、プラークスコアは20%になります。歯科衛生士は、歯周病患者さんにはまず、このプラークスコアが20%になるように歯磨きの指導をしていきます。

なぜ80%も落とさなければならないのか。なぜ80%でいいのか。

タイトルの、両方の疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。

実は80%という数字達成は結構大変です。特に歯周病にすでに侵されている方は、もともと歯磨きが苦手だった方も多い。

患者さんにまずは80%落とせるようになってほしい場所は、下の絵でいうと「歯茎のラインより上」の部分。歯茎のラインより下(歯周ポケット)の部分は、基本的に触る必要はなく、歯科医院での歯周病治療や、メインテナンスで対処する部分です。

しかし、歯磨きが苦手な方には大変なことであっても、まずはこの歯肉縁上の部分の8割を、自分で磨けるようになることは歯周病治療で最も大切なところです。

プラークスコアが20%まで改善してから、歯科医師による歯周病治療(歯肉縁下のバイオフィルムの除去や、歯周病の手術など)を行うと、中等度以上の歯周病がある方でも、大きな改善がみられたのに対し、プラークスコアが悪いまま歯周病治療を行った方は、改善が全くみられなかったという研究結果(*1)は、今でも多くの歯科医師が参考にしています。

歯周病治療が一通り終わって、定期メインテナンスに入ってからも、プラークスコアの良い方(20%以下)の方と、そうでない方では、歯周病の再発の有無や、長期間の健康な状態の維持に、大きな違いが出てきます。(*2、*3)

とにかく、まずは歯ぐきのラインより上の部分(歯肉縁上)の80%のプラークを落とせるようになることは、とても大切なのです。

まとめ

歯磨きが苦手で、歯周病が始まっていますよ、と言われてしまった方。

歯周病の原因と、その怖さをまず、よく知りましょう。進行するまで目立った症状が出ることのない歯周病は、なかなかご本人に理解してもらいにくい病気でもあります。

理解していただいた後に、患者さんにやってもらうことは、「プラークスコア20%を目指す」ことです。そのほかのことは、歯科医師や歯科衛生士がおこないます。でも、あなたの協力が、治療には不可欠なのです。

初めは、衛生士さんにスコアを聞いてみてもいいかもしれません。お気に入りの歯ブラシと、必要があればフロスや歯間ブラシ(小さなブラシ)を衛生士の指導のもと使用して、少しずつ、80点に近づくように、練習していきましょう。

 

参考文献
*1 Dahlen G, Lindle J, Sato K, Hanamura H. Okamoto H. The effect of supragingival plaque control on the subgingival microbiota in subjects with periodontal disease. J Clin Periodontol 1992;19(10): 802-809
*2 Magnussoon I, Lindle J, Yoneyama T. Liljenberg B. Recolonization of a subgingival microbiota following scaling in deep pockets. J Clin Periodontol.1084;11(3) 193-207
*3 Axelsson P, Nystrom B, Lindhe J. The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance. J Clin Periodontol 2004;31(9):749-757

 

 

 

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