【大人の予防歯科】日本の4つの学会が、最新のフッ素入り歯磨き剤の使い方を更新しました。

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

フッ素(フッ化物)が虫歯予防に効果的なことは、いまやほとんどの方が知っていると思います。

しかし、正しい使い方がわからなかったり、やみくもに信頼のけないネット情報などに惑わされて、フッ素の使用を拒否したり、謝った使い方をしている方もいらっしゃるのではないかと思います。

この度、フッ化物の使用にもっとも関連深い4つの学会(日本口腔衛生学会、日本小児歯科学会、日本歯科保存学会、日本老年歯科学会)が、現在の日本におけるもっとも推奨されるフッ化物の使い方を発表しましたので、まとめてお知らせしたいと思います。

Contents

推奨されるフッ素入り歯磨き剤の使用量と使い方

歯が生えてから2歳まで
900〜1000ppmの濃度のフッ素入り歯磨き剤を朝晩2回。ごく少量(1〜2ミリ程度。爪の先ほど)を歯ブラシにつけて磨き、そのままにします。気になればティッシュで拭き取っても結構です。
甘い匂いや味をつけてあることが多いので、保管場所に気をつけて、誤ってお子さんがチューブごと食べたりしないように気をつけましょう。(基本的には、1本飲み込んでも急性中毒を起こさない総量で製造されています)
以前は、2歳までは500ppmとされていましたが、安全性と効果を再検証し、今回の改訂になりました。

3〜5歳まで
900〜1000ppmのフッ素入り歯磨き剤を朝晩2回。5ミリに程度(グリーンピース大)を歯ブラシにつけて磨き、歯磨き後は歯磨剤を軽く吐き出しましょう。うがいをする場合は少量の水で1回までします。

6歳以降成人まで
1400〜1500ppmのフッ素入り歯磨き剤を朝晩2回。1.5〜2センチ程度歯ブラシにつけて磨き、歯磨き後は軽く歯磨剤を吐き出すか、少量の水で1回だけうがいをしましょう。
*以前は、インプラントを入れている方はフッ素入り歯磨き剤を使用してはいけないなどという指導をされた方もいらっしゃるかもしれませんが、現在ではインプラントにも全く問題ないとされています。むしろ、残っているご自分の歯を守るためにも積極的に使用を推奨しています。

歯磨き剤の濃度はどうやったらわかるの?

残念ながら、現在日本で市販されている歯磨き剤は、すべてにしっかりとしたフッ化物の濃度が記載されていないものもあります。特に子供用の歯磨き剤には書かれていないものが多いので、心配な場合は歯科医院で販売しているものを購入してもらうと良いかと思います。

また、以前は15歳以上とされていた1500ppmという濃度が6歳から推奨されることになりましたが、この濃度の歯磨き剤はお子様に馴染みにくい味(ミントなど)が多いので、選ぶ際には注意が必要です。歯科医院で扱っている歯磨剤には、お子様にも受け入れやすい味もありますので、お困りの際は歯科で相談してみてください。(写真はチェックアップ子供用950ppm)

合言葉は2、2、2

これは、予防歯科の大国スウェーデンのイエテボリ大学の教授が提唱している言葉で、6歳以上の方はすべてに通じる歯磨きの合言葉です。

「1日2回、フッ素入り歯磨き剤を2センチ、2分間」

この三つの「2」の基本を頭に入れておけば、毎食後躍起になって歯磨きをしたり、やみくもに長い時間歯磨きをする必要ななくなるのではないかと思います。

もちろん、歯科医院で歯周病のために特殊な磨き方を指導されていたり、虫歯の予防プログラムなどを積極的に行っている方は少し違うところもありますが、定期メインテナンスに通院しいている一般的な方であれば、上記で十分だとされています。

1日2回、は「就寝前とあと一回。」

「あと一回」は、基本いつでもいいとされていますが、口臭予防などの観点からもっとも効果的なのは、「朝起きてすぐ」です。

フッ素の使用に注意点はあるのか

他の薬剤や、あらゆる栄養素などと同じく、フッ素も大量に摂取すればフッ素症(歯や骨がもろくなる慢性症状)や、急性中毒の危険があります。しかし、これもあらゆる薬剤や栄養サプリなどと同じく、適切な量を適切なやり方で使用することで、危険性は回避され、健康に良い効果をもたらします。

ネット上の極端な情報などを鵜呑みにして、闇雲にフッ素を否定し、自分や子供の歯を虫歯にしている方を少なからず見てきました。特に、「自然派ママ」に多い気がします(私も以前自然派ママだったので、気持はわかります)。水道水にフッ素を入れていない日本では、歯磨き剤程度の使用でフッ素症になることはありませんし、フッ素の恩恵を最も受けることができるのはやはり幼少期です。

長くなった人生で、歯を長く使うためにはフッ素の力は不可欠です。生えたての数年間はフッ素が浸透しやすく歯を強くしますので、特に有効なのです。しかしありがたいことに、年齢を重ねたあとに増えてくる「歯の根元」の虫歯予防にもフッ素は威力を発揮すると言われています。

フッ素の使用に慎重になるあまり、世界水準よりも随分低く設定されていた日本のガイドラインがメイン学会により改訂されたことで(まだまだそれでも低いのですが)、生涯なるべく自分の歯で食べたり笑ったりできるように、正しいフッ化物の知識を得て、その恩恵を十分に受けていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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