「親のお口の中」に関心を持っていますか?

最近、80代、90代の方の歯科受診が少し増えてきたように思います。

80代を迎えても、ご自分の足や車で通うことができる方が増えたこと、そして8020運動(80歳で20本の歯を残そうと日本歯科医師会が始めたスローガン)が功を奏し、歯科治療も進歩したため、80代でもたくさんの歯が残っている方が増えたのも原因かと思います。

しかし、現状はと言えば、残っている歯はあっても、その多くがおおよそ理想的な状態とは程遠いのが現実です。

若い頃から定期メインテナンスで歯科に通う習慣がなかった世代は、一旦治療が終わってしまえば、痛いところや困ったところがなければ歯科に行かない方が多いのです。そのため、差し歯がとれた、入れ歯が合わない、歯茎が腫れた、などと歯科にお見えになるときには、かなり状態が悪くなってしまっています。どうしてこんなになるまで、歯科にかからなかったのだろう、とこちらもとても悲しい思いをします。

そこから、「入れ歯はいや、なんとかして歯を残して」などと言われても、それは難しい。インプラントを使用してなんとか入れ歯を回避しようとしても、歯周病が進んでいれば支えになるあごの骨が少なく、適応にならないことも多いのです。それでも、入れ歯がいやだと思う方はまだ自分の人生や健康に積極的な方なので、部分的な入れ歯やインプラントになってしまってからは、しっかりと自分の歯に向き合ってメインテナンスに通ってくれる方が多いので、良いのです。

一番困るのが、「どうせダメになったら総入れ歯にすれば良いから、痛いとこだけ治して」という方。それまでに要する長い不便な時間、そして汚れたり虫歯になったり、歯周病に侵されている状態が長いことによる健康への悪影響は計り知れず、さらに年老いてからいきなり慣れない入れ歯を入れても、苦労するのは目に見えています。

40代、50代の「子供たち」の皆様。もし、かかりつけの歯科医がいらっしゃらない場合は、まずはご自分のお口の中に興味を持ち、歯科医院に通い始めましょう。そして、ぜひ、高齢に差し掛かったお父さん、お母さんにも、歯科受診を薦めてください。通うのが困難なようなら、一緒に行ってあげてください。ご病気の場合は、訪問診療をしている歯科医院(歯科医師)も、今はたくさんありますので、探してみてください。どこに行ったらいいかわからない場合は、ホームページなどで確認し、「歯周病治療」や「定期メインテナンス」に力を入れている歯科医院を選んでください。治療と同時に、患者さんが知るべき知識を、教えてもらえるはずです。そのうち、ではなく、今すぐに、お願いします。

高齢者の「口腔内崩壊」を防げるのは、ご家族(ご親戚、知人、ご近所でも!)の「関心」と「知識」です。

ぜひ、「歯科に行ってる?なんともなくても、検診やクリーニングに行ったほうがいいわよ」とひとこと、声をかけてください。

 

 

 

関連記事