【ブレスケア入門】その舌みがき、待った!口臭と舌のケアの正しい関係

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

対人関係において、女性なら誰もが気になる人に言えない悩み。。。。といえば、「口臭」を挙げる人も多いのではないでしょうか。

そして、テレビや雑誌などで、「口臭の原因は舌についた汚れ!!」などどいう言葉が目や耳に入ってきます。

それは間違いではないのですが、その言葉に影響されて、舌のケアを始めた方がいたとしたら・・・ちょっとだけ、この記事を読んでみてください。舌のケアには、ちょっとした注意が必要です。

口臭と舌の関係

口臭には、虫歯や歯周病、もしくは耳鼻科や内科の病気など、「原因」があって起こる「病的口臭」と、特にそのような原因が見当たらなくても誰にでも起こりうる「生理的口臭」の2種類がある、ということは以前の【ブレスケア入門】でお話しました。

口臭とその基本的なケアについて、まとめた記事はこちら↓

病的な口臭は、もちろん専門の医師、歯科医師のもと、原因を治療する必要があります。しかし、生理的口臭に関しては、適切なセルフケアでコントロールできることがほとんど。しかし、上記の基本ケアをまとめた記事に、「舌を磨く」というケアは入っていません。

では、舌の汚れは口臭と関係がないのか、と言われれば、関係はあります。食事をした後に食物の残さが残るのは、舌の上が80%と言われています。また、舌の複雑な表面の性状という特徴から、口腔内の細菌も溜まりやすいのです。

これらの細菌のなかに、悪臭を産生する「嫌気性菌」があれば、口臭を起こすことは十分に考えられます。しかし、だからといってすぐに、「舌の汚れを取り除くために舌を磨いたらいい」ということにはならないのです。

とても繊細な舌のしくみ

舌に食事の残さや細菌が溜まりやすいのには、舌の特徴的な性状に原因があります。

舌の表面は、乳頭とよばれる立体的な突起物がびっしりと密集しています。ムーミンの「ニョロニョロ」を想像してみてください。舌の表面は、あの感じです。「言葉を発せず、手を振るなどの動きでコミュニケーションをとり、感覚はとても敏感(ムーミン公式サイトより)」など、性格まで似ている気がします。

ニョロニョロの頭はつるんとしていますが、舌乳頭の頭は少し鍵状に曲がっています。絨毯の毛糸のような感じです。

なぜ、そのような形になっているのか。それは、「唾液」を舌の上にためるためと言われています。唾液は、消化に大切な役割を果たすとともに、口腔内を保湿して噛んだり、飲み込んだり、という機能を潤滑にしています。そんな大事な役割を持つ唾液を、舌の上に保持しているのです。

そんな繊細な舌の表面を硬い歯ブラシでゴシゴシ磨いたり、ドライマウスで口腔内が乾燥したりして、乳頭(ニョロニョロくん)に傷がつくと、頭の部分が白く肥厚して舌全体が白区なってきます。それを「舌苔」と思ってさらに取り除こうとやっきになると、さらに舌が傷ついて乾燥などの症状が進んでしまう、という悪循環に陥ることがあります。

舌の上に舌苔ができる原因

舌苔(ぜったい)は、健康な人でも気になる時と気にならない時があったりなど、はっきりした原因がわからないことも多い症状ですが、現在考えられている原因としては下記のものがあります。

*口腔内の不衛生による汚れ
*舌の位置、筋力が弱いなどにより、唾液による自浄作用がうまく働かない方
*口腔カンジダ症などの口腔内の病気
*抗菌薬などの服用
*内科的疾患がある

病気による舌苔が起こることもあるため、その場合は病気の治療が必要になりますが、健康な方に起こりうる舌の汚れの堆積(上記上から二つ)は、セルフコントロールで十分に防ぐことが可能です。

気をつけなければならないのは、上述した「乾燥による乳頭の肥厚」を舌苔と間違えないこと。見分け方がわからない場合は、下記にご紹介する方法で注意深く舌苔をやさしく掻いてみて、取り除けるか確認してみましょう。

舌の上の汚れの対処法

舌の汚れは、舌磨きを行わなくても、ちょっとしたセルフケアで予防することができます。

1。舌の上に汚れが残らないようにする生活習慣
*食事のあと、水を含んで舌を動かし、上顎にこすりつけます。舌の汚れが取れるとともに、舌を動かすことで唾液の分泌も促されて、口臭の予防にもなります。
*キシリトールガムなどを噛んで、出す前に丸めて舌の上を転がします。上記と同じく、舌の汚れ除去と、舌を動かすという機能訓練が同時に行えます。

2。口腔乾燥を防ぐ
*口呼吸になっていないかを確認します。
*適宜水分を意識して摂るようにします。
*ドライマウスがある方は、保湿成分のあるジェルなどを使用します。

3。舌の掃除をする
舌磨きという言葉が、よくないなあと思います。歯磨きの延長のような感覚で、「磨いてしまう」方がどうしてもいらっしゃるからです。舌の汚れを用具などで取り除く行為は、あくまで上記を習慣化した上で、どうしても気になる時に行って欲しいものです。
舌をきれいにする用具のなかで、一番推奨できるのは、スクレイパーというシンプルな用具で、やさしく舌の上のぬめりや汚れを取り除く方法。スクレイパーはプラスチックや金属製などがありますが、いずれにしてもとてもシンプルな構造です。これであれば、繊細な舌乳頭を傷つける心配は少なく、用具の形状もシンプルで清潔が保てるので、おすすめです。乾燥による舌乳頭の肥厚と舌苔の区別がつかない場合も、この方法で優しく行えばあまり心配はありません。

スクレイパー以外では、舌に特化した柔らかいブラシなどを用意し、けして歯ブラシで舌を磨かないようにしてください。無理な舌磨きは、舌乳頭を傷つけ、口腔乾燥を招くこともあり、却って舌苔がつきやすくなったりします。

いずれの方法にしても、舌を掃除するというケアは最低限(多くでも1日に一回)にして、口腔乾燥を防ぐ、舌の汚れを機能的に(よく動かすことで)取り除く、という根本的な方法を優先することがとても大切です。いつの間にか、舌を掃除しなくても気にならなくなるはずです。

まとめ

実は舌のケアは、通常の「生理的口臭」への対処方法を行なっていれば、特に必要ないことも多いのです。舌苔の除去が有効なのは、舌の機能の衰えの目立つ高齢者などが主で、それ以外の世代の健常者であれば、舌磨きなどを積極的に行う意義はあまりありません。

しかし、どうしても舌の汚れが気になる方や、舌苔を少しでも取り除いてですっきりしたい、という気持ちがある方は、ちょっとだけ上記の注意事項を思い出して、やり方を確認してみてくださいね。

繊細で傷つきやすい「ニョロニョロ」のような舌の表面を思い出してみれば、舌のケアにちょっと注意を払うことは、簡単なはずです。

 

 

 

 

 

 

 

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