第72回 歯科医師夫婦のつれづて手帖〜今だからこそファクトフルネス

歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、歯科医院を共に営む夫(真面目なのでここではマジオ君)とともに、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年から書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 必ず毎月、どちらかが書く。
2 内容は、歯科治療以外の事とする。

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のあみ

コロナ禍と言われる様になってしばらく経ちます。派手な報道に不安を掻き立てられることの多い昨今ですが、雰囲気やなんとなくのイメージに惑わされない、ファクト(事実)をしっかり見据える力こそ、今を生きる人たちに求められているのではないでしょうか。

第72回 今だからこそファクトフルネス

質問1.世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
 A. 約2倍になった B. あまり変わっていない C. 半分になった
質問2.国連の予想によると、2010年には今より人口が40億人増えるとされています。人口が増える最も大きな理由は何でしょう?
 A. 子供(15歳未満)が増えるから B. 大人(15歳から74歳)が増えるから C. 後期高齢者(75歳以上)が増えるから
 正解は質問1がC、質問2はBである。正解できただろうか?
昨年話題になった「ファクトフルネス(日経BP社)」からの引用だが、世界14か国12,000人に行った調査で、12問の平均正解数はたったの2問とのこと。3択なので、確率的には4問程度正解できるはず。なのに、何故だろう?
著者ハンス・ロスリングは言う。ドラマチックなものを求める本能により、先入観や思い違いがあり、ありのままの世界を見ることができないためだと。10の本能を挙げ詳細に解説しているので、興味を持たれた方は読んでいただきたい。
 いくつか紹介すると、危険でないことを恐ろしいと考えてしまう「恐怖本能」、目の前の数字が一番重要だという「過大視本能」、今すぐ手を打たないと大変なことになるという「焦り本能」などだ。
 日々繰り返される新型コロナウイルス感染症の報道。これにより人は二分化されたように思う。一つは発信される情報(特に数やドラマチックな事例)を鵜呑みにして、過度に恐れるタイプ。他方は、信頼のおける情報を積極的に求め、重症化や死亡者の率を重視し、必要以上に恐れる必要はないと考えるタイプである。悲しいことに、徐々にそれぞれの溝は深まり、考えの違う他者を非難する傾向もみられる。
 今年はお盆の帰省を中止すると、多くの人が考えているそうだ。「万が一、大切な人に感染させたら…」との想いはわかる。一方、緊急事態宣言発令中に、帰省を躊躇し親の死に目にあえなかった知り合いがいる。PCR検査陽性者が減ることは、ここしばらくは無いであろう。いつまで我慢したら良いのか?孫や子にも会えず、寂しさとともに永らえることは、果たして幸せなのだろうか? そう考えてしまうのは、無責任なことだろうか…。根拠のない恐怖が取り払われ、誰もがより生産的なことに気持ちを傾けられたらと願っている。(文 まじお)

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