エンターテインメントの力 〜第113回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖〜

歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、2010年から歯科医院を営む夫婦が、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年より院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。

ルール1 必ず毎月、どちらかが書く
ルール2 内容は、歯科治療以外のこととする(時々ルール違反あり)

第113回 エンターティンメントの力

 昨秋、劇団四季ミュージカル岩手公演「クレイジー・フォー・ユー」を観に行った。

 華やかで、とにかく楽しいラブコメディが、ガーシュウィンの名曲にのって繰り広げられ、幸せな気分に満たされ家路についた。ミュージカルを観るといつも思うのが、圧倒的な歌唱力とキレのある動作のすばらしさ。そして、展開も計算しつくされた舞台や照明の見事さ。役者のみならず、スタッフ関係者全員で作り上げるプロフェッショナルの仕事に感嘆する。

私がミュージカルで初めて衝撃を受けたのは、ミュージカル映画「コーラスライン」だ。

大学入試の合格発表の日、発表までの時間つぶしとしてふらっと映画館に入った。舞台はブロードウェイの薄暗い劇場。往年のスターダンサーだった女性がオーディションを受けに来る。審査する演出家は昔の恋人。この二人の揺れ動く感情と、最終選考に残ったダンサーの様々な人生が交差しながらオーディションは進んでいく。

皆の舞台にかける想いが痛いほどだ。選ばれた8名が華やかな舞台で「One」を踊る最後の場面では、いつの間にか落選したダンサーも一緒になり、大人数での迫力のダンスが繰り広げられる。感涙をぬぐって、発表を見に行った。

 この日、第一志望校には選ばれなかった。しかし、この映画で様々な人生模様を観た後だったので、あまり落ち込むことなく、合格した学校で頑張ろうと前向きに考えることができ、今につながる。私の人生の分岐点であった。

今やエンターテインメントは多様化し、テレビのみならずパソコンやスマートフォン等でも手軽に楽しむことができる。

しかし、劇場に足を運んで、その時間をそれだけにゆだねるのは、格別の経験になる。「エンターテイン」は(楽しませる)という動詞だが、「エンター」(~の間に)と「テイン」(つかむ)で「人の心をつかんで離さない」というのが、「エンターテインメント」の語源とか。

楽しいだけでなく、人生の転機にも成りえる可能性を求め、心をグイっとつかまれる経験をしに、たまに出かけてみてはいかがだろう。  (文: 松浦 政彦)

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