横断歩道も自分次第!優しい個人主義、ロンドンの街角

歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、2010年から歯科医院を営む夫婦が、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年より院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。

ルール1 必ず毎月、どちらかが書く
ルール2 内容は、歯科治療以外のこととする(時々ルール違反あり)

第115回

2021年からオンラインで在籍している大学院のスクーリング(現地研修)に参加するため、真冬のロンドンに1週間ほど滞在してきました。

相変わらずのどんよりとした曇り空、しかも寒い!

それでも、真っ赤なダブルデッカーがそこかしこを走り回り、石造 りの重厚で壮麗な建物が延々と並ぶロンドンの街角は、いくら見ても見飽きることはありません。

その中でも私が「ロンドンに来たなあ」としみじみ感じることのひとつは、地下鉄で繰り返し放送されるあるセリフ。

地下鉄にのると、「Mind the gap!(マインド ザ ギャップ:隙間に気をつけて!)」という放送が、駅に着くたびに流れます。

Mindは「心」という意味の英語ですが、イギリスでは「気をつける」という意味でも使われていて、それがまたなんともイギリスらしい。

「マインドザギャップ」は、電車とプラットホームとの間にある隙間に気をつけるよう促すもので、地下鉄の システムの古さがうかがわれます。

もう一つ、ロンドンの街角で大好きなもの。

それは「横断歩道」。

一応、日本と同じ信号はあるのですが、足元を見ると「LOOK LEFT(左をみて)」 などと書いてあります。つまり、信号が赤でも、右(左、や両方、のときもありま す)をみて、車が来なければ渡っていいよ、というシステム。

中央分離帯で片側通行になっていることも多いので、左右どちらかだけを注意 すればいい、という場所が多いことも理由ですが、「何をやるにも、自分の責任で ね♪」という個人主義が垣間みえます。

でも注意する方向をわざわざ書いて、お世話してくれるのが(たぶん)他のヨーロッパの街には見られないロンドンの優しさ。

雲に覆われた冬の暗いロンドンで、暖かな個人主義を醸し出しているように思えて、「ありがとう」と呟きながら、信号無視をするのです。

さて、大人になれば、何をやるにも自分の責任です。

だからこそ、自由。

いくつになっても、ロンドンの横断歩道のように注意を促してくれる周りの人たちに感謝しながら、自由と責任を謳歌したい、と思える優しい冬の街でありました。 (文:松浦直美)