少しずつ、理想に近づく(その3) 〜第46回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖

歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、2010年から歯科医院を営む夫婦が、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年より院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 かならず毎月、どちらかが書く
2 内容は、歯科治療以外のこととする

第46回 少しずつ、理想に近づく

これまで2回にわたり、予防に力を入れるため、いかに定期メインテナンスを定着させるかに頭を悩ませてきたお話をしました。

日本では保険で定期検診を行うことは認められていますが、その内容や許されている間隔は、ひとりひとりの状況に即した手厚いもの、とは少し違います。

「まだ病気になっていないところへの予防」には保険は効かず、「病気のところ」に対して経過を見ている、または何か問題を早期発見するための検診です。

それでも、保険で認められている最大限の内容を、衛生士たちは頑張って行っており、その甲斐あって健康意識の高い方々がたくさん通院して下さっています。

では、「病気」ではないところへの予防、早期発見ではなく、これからの病気の発生を極力抑えるために歯科衛生士ができることはないのでしょうか。

方法はあります。

人が歯を失う原因の7割は「虫歯」と「歯周病」。

この二つは、原因がはっきりわかっています。それは、細菌の感染。この原因(細菌)の除去を、的確に、定期的に行うこと。

これだけが、歯科疾患の大半を予防する方法なのです。

自分で細菌(プラーク)を100%落とせる人はいません。目標はまず歯の表面で70%です。歯周ポケット内の細菌を歯磨きで落とすことはさらに難しいので、定期メインテナンスの出番です。

しかし、病気でないすべての歯に予防処置を施すことは保険では認められていませんし、徹底的な細菌の除去には時間、よい道具、そして技術が必要です。

この部分を補うのが、保険外のメインテナンスです。

保険の制約に縛られることなく、オーダーメイドの予防処置を施すことが可能になります。歯科先進国といわれるスウェーデンや米国では、こうした積極的な予防のためのメインテナンスはごく普通に行われています。

当院でも2年ほど前から医院を挙げて、この予防メインテナンスの理論や技術の獲得に取り組んでおり、こちらのメインテナンスを選ぶ方も増えてきています。

保険の検診と、保険外のメインテナンス。この両輪を得て、少しずつ、少しずつ、開業当初の「理想」に近づけているような気がしています。         (文 松浦直美)

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