女性歯科医師の会にみた、本当の平等 〜第36回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖〜
歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、歯科医院を共に営む夫(真面目なのでここではマジオ君)とともに、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年から院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 必ず毎月、どちらかが書く。
2 内容は、歯科治療以外の事とする。(時々ルール違反あり)
第36回 女性歯科医師の会にみた、本当の平等
「歯科医師会」とは、歯科に関する啓蒙活動や、患者さん、歯科医師双方の権利を守るための社会活動を行う歯科医師による団体です。その中で、女性歯科医師による部会「いわて女性歯科医師の会」は、平成20年に結成され、女性の視点で講演会の開催や各種イベントでの歯科相談などを実施するほか、女性歯科医師を対象に、歯科界で活躍されている著名な歯科医師や各種プロフェッショナルを招いての講習などを行っています。
先日も、予防歯科や小児歯科の分野での著名な著書も多い東京都の倉治ななえ先生を招いた小さな交流会が開かれ、私も末席に参加させていただきました。開業以来バイブルにしている「子育て歯科」の著者の先生でもあり、同じく岩手県内で開業されている同業の先生方とともに話に花を咲かせることができて、とても有意義な時間でした。
「倉治先生の話か、俺も話聞きたかった」という院長の声を聞いて、「女性歯科医師」という狭いくくりに入っているおかげで、歯科医師会員でもない私にも(院長が会員)、このような役得もあるなあ、と思いながら、先日のハリウッドの女優エマ・ワトソンのスピーチを思い出しました。
「美女と野獣」による主演で、MTVムービー&アワードが初めて導入した、女優、男優の区別のない「最優秀俳優賞」を受賞した時のスピーチで、「人間を演ずる俳優という職業を、性別で二つに区別する必要はない」という内容に、大きな反響がありました。彼女は2年前の国連のスピーチでも、女性が平等を謳うためには、男性にも平等な社会でなければならないと話していて、その内容にはとても感心しました。男だから強くなければならない、男だから仕事をばりばりしなければならない、という考えを解き放ち、男女とも、いろいろな働き方、いろいろな生き方をしてもいいんだというのが本当の平等。フェミニズムの実現には男性の参加が不可欠、という内容でした。経済面を考えても、実現には途方もない時間がかかりそうですが、娘も息子も持つ身としては、将来本当にそんな社会になっていくといいな、と思いました。
「女性歯科医師の会」はとても素敵な集まりです。しかし、男性歯科医師、原則として歯科医師会に入っていない歯科医師は参加することができません。そのうち、女性歯科医師の会が企画する女性視点の研修に男性も集まるようになり、さらには、「女性」と名前をつけなくても、仕事を続けている女性歯科医師がたくさん集まるような交流会が増えていくと、少しそんな世界に近づくのかな、と思います。
(2017年 6月 )
後記: 平等と自由、それと引きかえに背負うもの
このブログに院内新聞に書き続けてきたエッセイをまとめている現在は2021年。第36回を書いたのは2017年、約4年半ほど前の話になります。
あれから、この「男女」の平等感、さらには、ジェンダーという枠組みを離れた性別の考え方など、急速に世界は変わってきているなあという感覚があります。男女問わずに「俳優」という呼び名はかなり定着してきていますし、「看護師」「助産師」などは、私たち世代より下の方は昔の名前がわからないくらいでしょう。さらには、男女問わず働き方もますます多様になり、平等を追い求めてきた女性にとっては、むしろ平等と自由と引き換えに、大きな責任を背負わなければならない場面も増えてくるでしょう。そのことをまずは、男女ともに、認識することが必要ではないでしょうか。
(2021年11月)