第75回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖〜伝えるための心と技術

歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、歯科医院を共に営む夫(真面目なのでここではマジオ君)とともに、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年から書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 必ず毎月、どちらかが書く。
2 内容は、歯科治療以外の事とする。

第75回 伝えるための心と技術

10月のある2日間を利用して、当院若手歯科衛生士4名が、予防歯科の専門歯科衛生士による予防歯科研修を受けました。当院では恒例になっている研修の一つで、先月はオンラインで理論研修を受け、今回はそれに続く実技講習でした。すべて診療時間内に行いましたので、予約を減らし、私もいつもは歯科衛生士が診てくれている小さな子のメインテナンスを担当したり、置いてあるものの場所が分らず右往左往したり。改めて皆の苦労を再認識し、研修を受ける側、留守する側、双方が改めて感謝の気持ちをもてた2日間でした。
 さて、今回の研修内容は、「SRPセミナー」といいます。SRPとは、歯茎の中深くに入り込んだ歯石やバイオフィルムを、歯の根元を傷つけずにしっかりと取り除く初期治療のことで、歯の土台となる歯茎や骨の健康を守る(回復する)とても大切な処置です。当院では、被せ物や詰め物などの治療の前に行うとても大切な治療と位置付けており、はじめて受診された方には出来る限り、担当歯科衛生士が一人一人の状態に合わせて2~6回ほどかけて行っています。忙しい中通院し、早く虫歯治療してほしい患者さんに、SRPの重要性を理解してもらうのも大変ながら、正しいSRPの技術を身につけるには、理論の理解、実技研修、そして練習が必要。現場で患者さんと多くの時間を共有する衛生士は、大変なことも多いと思います。
 とはいっても、みんな明るい先生と和気あいあい。やはり自分が成長できて、医療人として、医院に来てくれる患者さん達に大切なことを自信を持って伝えられるようになったら、それはやはり素晴らしいこと。

 「歯科衛生士の正しい知識と情熱で、10人の患者さんのうち7人の心と行動を動かせたら大成功」という、先生の言葉が印象的でした。初期治療やメインテナンスの重要性が伝わらずに、途中で通院が途絶えてします方はどうしてもいらっしゃいますが、一人でも多くの方に伝えることが出来たら、と思います。むし歯予防は妊娠中から、歯周病予防はあまり悪くなる前の30歳前後には始めるのが理想。自覚が無い世代の意識を動かすのは大変なことですが、研修を終えて、また一つ、心も技術も前進できたのではないでしょうか。(文 のあみ)

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