おばあちゃんが何度もお礼を

おしゃべり好きな素敵なおばあちゃんが何度もお礼を

こんにちは。歯科医師ののあみです。

祝日に囲まれた今日は、急患も多くとても忙しい1日でした。お待たせしてしまった方々、申し訳ありませんでした。

そんな中で、高齢の患者さんが、歯が痛くて噛めないと言って来院されました。見ると、長いブリッジ(何本かの歯を土台にして、無くなった歯の部分を補填するために人工の歯をつなげて作る修復物)の土台になっている歯の1本が痛むようでした。おそらく、歯が割れてしまったのだろうと説明し、ブリッジをはずしてみると、案の定、歯の根がぱっくりと割れていました。こうなれば、この歯は抜くしかありません。86歳にして、初めての入れ歯になってしまうことになりました。説明をしっかり聞いてくださり、「お任せしますよ」と言ってくださいました。

「ところであなた、先生なの?」

いつも夫が診ていたこの患者さんを私が診るのは初めてで、患者さんは不思議に思ったらしく聞いてきました。

「だんなさんと一緒に頑張っているのよね、いつもお世話になっています」
本当にしっかりとした女性。結構遠くの住所から、散歩がてら1時間近くかけて歩いてきたと言う話を聞き出すと、その後お話がなかなか止まらずに、延々と続きます。次の患者さんが待っているので気にしながらも、楽しい方だったのおで少しの時間お話を聞かせていただきました。

「近くにも歯医者はたくさんあるけど、私はここが良くて通ってきているの。本当にいつもありがとう、痛い歯がよくなってうれしい」

抜歯が決まったというのに、ニコニコと明るいその方は、その後も何度も何度もお礼を言うのでした。

この高齢女性を見て、とうに亡くなった秋田の祖母を思い出しました。

先代院長の写真におじぎ

祖母は、ある歯科医院に長年通っていましたが、院長であった歯科医師が高齢のため亡くなり、引き継いだ娘さんの歯科医師のもとに通うことになりました。

古い歯科医院の壁には、先代の院長の写真が飾られていて、その院長を尊敬していた祖母は、歯科医院を訪れるたびに、必ずその写真に丁寧にお辞儀をしてから診療台に座ったそうです。

「あの娘さん先生ね、オレがいっつも大先生の写真にお辞儀するもんだから、オレのこと気に入ってるんだよ」
なんだ、気に入られたくて先代先生の写真に頭下げてたのか?意外としたたかだな(笑)。

それは冗談としても、女性でも自分のことを「オレ」という秋田弁と、長年お世話になった歯科医院への忠誠心、そしてその忠誠心ゆえの自然な行動が、2代目院長にいたく気に入られたことを孫娘に語る得意そうな顔。大正生まれの懐かしい祖母の顔が、丁寧に何度も頭を下げる目の前の患者さんにちょっと重なりました。

治療の成功は、信頼しあってこそ。

歯科医師だって人間。自分や医院を信じて通ってくれる方を大切に思い、精一杯つくすのは自然の成り行きです。

うちは良い患者さんに恵まれていると思うのですが、本当にまれに、「安い値段で、最高の治療をしろよ、失敗は許さないぞ」という態度の方がいらっしゃいます。先日、「こっちは顧客だぞ」と言われた時には、本当に悲しい思いをしました。
お互いを信頼し、尊敬しあってこそ、繊細で難しい歯科治療が成功するということを、患者さんの側も理解していただけたら素晴らしいことだと思います。それは、例えば「店」と「顧客」の間柄でも同じことです。どちらが偉い、と言うことはもちろんありません。

さてさて、今日お会いした86歳の女性が、無事治療が終わり、これからも元気に歩いてメインテナンスに通院してくださる日が続きますように。心からそう思った忙しいある1日でした。

 

 

 

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