【ミニマル歯科治療】「落とし穴」にご用心。最先端!ミニマルな治療の注意点

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

先日から、歯科医療の中でも世界的に「メジャー」になってきているMI:Minimal Intervension (ミニマルインターベンション:最小限の身体へのダメージ)で行う歯科治療方法をご紹介しています。

このブログでは、分かりやすいように【ミニマル歯科治療】と題して、さまざまなMI治療を話題にしてきました。私が在籍している英国Kings College Londonの審美歯科コースでも、いかに審美歯科治療をミニマルにするかに心を砕いていて、本当に私が歯科大学を卒業したウン10年前とは、考え方が全く変わってきています。

そのため、勉強熱心な歯科医師ほと、このMI(ミニマル歯科治療)をよく勉強していて、いろいろなところで発表していたり、実践していたり、そして自分の歯科医院で、患者さんに提供したりしていて、恩恵は広がってきていると感じます。

しかし、最近思うことがあります。

誰が聞いても耳に心地良く、素晴らしい方法に思える「ミニマル歯科治療」。私の医院での人気も高いです。しかし、このMIという言葉に固執しすぎたり、少し履き違えたりして、かえってよくない結果を招くこともあるのがこの治療法で気をつけなければならない点です。

Contents

ミニマル歯科治療とは

さて、あらためて、ミニマル歯科治療とはどんなものなのか、おさらいしましょう。

その名の通り、歯や歯ぐきに大きなダメージを与える治療を避け、なるべく歯を削らずに、最低限の治療でなるべく大きな効果を出していこう、という考え方です。歯を削らないことで、歯の内部にある神経を守ることができたり、歯の寿命が伸びることが知られています。例えば、下記のような治療がミニマル歯科治療の代表的なものになります。歯や体へのダメージが少ない方法から、紹介していきますね。

歯のクリーニング
タバコはもちろんですが、お茶やコーヒー、赤ワインなどをよく飲む方は、歯の色がくすんできます。歯の表面の汚れを取り除くだけで、歯が明るく白くなり、お顔全体が明るくなります。

ホワイトニング
歯を白くしたい方は多いです。しかし、歯を削って詰め物や被せ物を被せたりせずに、ホワイトニングで済む状態の方も多いのです。定期クリーニングに加えて、定期的なホワイトニングすることで、天然の歯を白く保つことができる、最高のミニマム治療だと思います。

歯列矯正
歯を削らずに、歯並びを治すと言えばやはり矯正治療が必要になります。また、セラミックや、ダイレクトボンディング(白い詰め物)などの審美性の高い材料で治療する前にも、歯並びを直しておけば、被せ物をするために削る歯の量を大きく減らすことができます。

白い詰め物
コンポジットレジンと言われる詰め物。虫歯治療に広く使われるほか、強い接着技術と合わせて前歯の隙間を削らずに閉じたり、あまり歯を削らずに欠けた歯を再生させたり、という治療に使われます。

セラミックの被せ物
セラミックを被せる際は、以前は大きく歯を削ることが必要でした。しかし現在は、優れた接着技術を活かして、あまり歯を削らずにセラミックを被せることも可能になっています。(状況により、適応にならないこともあります)

欠点はあるの?知って欲しいミニマル歯科治療の「思わぬ落とし穴」

上記にあげた通り、ミニマル歯科治療の技術はどんどん進んでいます。このような治療が昔からあったら、今の40代以降の年代の方の多くが、もっと歯を残せていたのではないかと思います。

しかし、もちろんミニマル歯科治療にも、気をつけていただきたいことが2点あります。

適応や状況を見誤らない
ここは、歯科医師側が気をつけることであることは間違い無いですが、患者さん側でも、情報収集に熱心だったり、他院で聞いた話にこだわりすぎて、「神経を取らない」「歯を削らない」という部分にのみ固執してしまう方がいらっしゃいます。

当院にいらした患者さんの例です。

1。歯の中の神経が死んでしまっているのに、決して神経を取り除かないと言い張る方。
来院して、歯の状態を説明すると、「前の医院では、神経を取ると歯が弱くなると言われた。絶対にとりたくないです」と言って、この後来なくなってしまった方。

2。適応ではない状態の歯に白い詰め物があり、残っている歯にひび割れなどの心配な兆候が起こっているのにもかかわらず、「絶対にこれ以上は歯を削りたくない」といって被せ物の治療を拒否する方。

どちらも、このままではよくない状況に陥るのはわかっています。ご自分の歯を大切に思うあまり、どこかで見聞きした情報や前医でのお話の一部だけを拡大解釈してしまい、適切な治療を受けられなくなる方がこれからも増えるのでは、という気もします。ミニマル歯科治療の広がりとともに、私たち歯科医療従事者も、情報の提供に気をつけるべきところだと思います。

継続したケアが必要
もう一点、ミニマルな治療は、劇的な効果が出にくいものもあり、継続したフォローが必要になります。特に、白い詰め物による治療は、材料が劣化したり、かけてしまったりすることもあり、研磨や修理など、少しずつケアすることが必要になります。

それでもやはり、ミニマル歯科はすばらしい

ミニマル歯科治療の魅力は、やはり歯を極力削らないこと。これにつきます。
クリーニング以外は、保険が効かない治療も多いのですが、適応のある方にはぜひ検討していただきたい治療方法です。そして、長い人生の中で、ミニマル歯科を実践しながら年齢を重ね、どうしても必要な時期がきたら、そこで初めて歯をしっかりと削って見た目や噛み合わせを整える被せ物などによる「マキシマム歯科治療」を考える。

患者さんの生涯にこうやって伴走できる歯科医院になれたら、素晴らしいなと考えている今日この頃です。

 

 

 

 

 

 

 

ミニマル歯科治療とは

閉鎖 かけた歯の修復 ホワイトニング 矯正治療

ミニマル歯科治療の欠点

劇的な変化は望めないことも
メインテナンスでの研磨、修理など
ミニマルにこだわる危険性

半端な情報、半端な知識が「極端な」患者さんや歯科医師を産む。

 

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