【大人の予防歯科】ドライマウスと虫歯の深い関係

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

大人の予防歯科、特に大人の女性の予防歯科を考える上で、「ドライマウス(口腔乾燥)」について考えることは欠くことができません。

それほど、年齢を重ねた女性にドライマウスの症状は増えてきますし、それとともに今まであまり心配のなかった「虫歯」が急に増えてくることも多くあります。

ドライマウスは、口臭の大きな原因にもなり、本当にやっかいです。ドライマウスの原因とその対処法について、口臭予防の観点からまとめた記事はこちら↓

今回は、ドライマウスと「大人の虫歯」の深い関係について、お話していきます。

Contents

そもそも、ドライマウス(口腔乾燥)って何?

ドライマウスの正確な定義はなく、患者さんご自身で「口が乾く」「なんだか口の中がねばねばする」などという訴えがあったり、歯科医が口腔内を見て粘膜や舌の渇きがあったときに、口腔乾燥(ドライマウス)と診断されます。

実際に唾液が少ないのかを客観的な検査などで測ると、本当に唾液が減少している場合もありますし(唾液分泌減少:Hyposalivation), 口呼吸やストレス、緊張などで一時的な現象である場合もあります。

しかし、自分で慢性的に口の渇きを感じている方は、多くが実際に唾液の分泌が減少していることが多いです。

ドライマウスの原因

最大の原因は薬の服薬。
よく言われるのは高血圧の薬や向精神薬ですが、海外の研究では一般的な処方薬の80%以上が唾液減少の原因になるとされており、その危険度は薬の種類が増えるほど、高まります。

女性の場合は、更年期によるホルモンの変化で、自律神経の乱れから、唾液の減少が起こりますし、糖尿病や関節リウマチ、シェーグレン症候群などの全身性の疾患、放射線療法などでも強い口腔乾燥が起こります。

口腔乾燥が、なんらかの病気の現れであることもありますので、症状のある方は内科などを受診することも大切になります。

その後は、その症状の強さに合わせた対症療法が主になりますが、虫歯の予防に関しては、かなり積極的な対策が必要。短めの定期メインテナンスと、歯磨きのタイミング、フッ素の使い方など、きめ細やかな対応を行なっていきます。

唾液量の確かめ方

さて、なんだか舌がひりひりすることがあるけど、私ってドライマウスかな?

心配になった方。簡単な唾液検査がありますので、家に誰もいない時、こっそりやってみましょう。

1。安静時唾液(食事をしていない時の唾液量)
普段の唾液の量を測ります。やり方は、コロナに感染してしまったり濃厚接触者になって、PCR検査を受けたことがある方であればわかるかも。あれと同じです。目盛りのついた調理用のカップや大さじ(15ml)に、5分から10分ほどかけて、唾液を出します。できれば1時間前から食事や喫煙は控えましょう。目盛り(ml)があればそのまま、無ければ重さを測り、1g=1mlで換算します。

2。刺激時唾液(食事の際の唾液量)
できれば専用のワックスがいいのですが、なければ普通のガムを使用しても構いません。梅や刺激の強い味は避けましょう。5分間ガムを噛み続け、唾液を容器に出していきます。最後にmlまたはgで数値をはかります。

ドライマウスが疑われる数値 (数値はカリエスブック:伊藤直人 医歯薬出版より)
安静時唾液 0.1ml /分以下 (0.3~0.4ml /分が正常)
刺激時唾液 0.8~1.0ml /分以下(1.5~2.0ml /分が正常)

安静時唾液が5分経っても0.5ミリも出ない、5分ガムを噛んでも5ミリの唾液が出ない、という方は、ドライマウスの可能性が高いです。歯科に定期通院のない方は、精密検査をうけて虫歯や口臭の予防策を考えることが必要かもしれません。

ドライマウスと虫歯予防

ドライマウスの方は、本当に虫歯になりやすいです。定期メインテンスのたびに、毎回チェックするのがドキドキです。「あの方、また虫歯ができていないかな」と心配なのです。

唾液は、口の中を浄化するだけでなく、歯のミネラル成分を多く含むため食事でダメージを受けた歯を修復し、食事で酸性に傾いた口の中を中性に戻してくなど、虫歯の予防に大きな大きな役割を果たしています。

何らかの原因で唾液が減少している方は、虫歯にかなり注意しなくてはならなくなるのはそのためです。

当院では唾液の量だけではなく、唾液の緩衝能(酸性に傾いたお口の中を中性に戻していく力)や虫歯菌の量、食事、歯磨きの具合などを総合的に確認できる予防唾液検査を行い、その方にあった予防プログラムを作って対策していくことも、お勧めしています。

ドライマウスと、虫歯が多くみられた女性の予防プログラムについての記事はこちら↓

ドライマウスと診断されたら

実際に検査で唾液の減少が見られたり、ご自分で「乾燥感」をよく感じる方は、下記の対策をとりましょう。もちろん、かかりつけの歯科医院に伴走してもらうことが特に大切なのはいうまでもありません。

  1. 唾液の素となる水分を忘れずに摂ります。水分を摂るのを忘れがちな方は、朝起きた時、10時、3時、など時間を決めてみましょう。
  2. 唾液腺のマッサージや、あいうべ体操など、唾液の分泌を促す習慣を取り入れてみましょう。
  3. 口が乾くからとアメや糖分の多いガムは厳禁。キシリトール50%以上のガムを時間をかけて噛んでみましょう。
  4. 軽度の方は朝起きた時と寝る前の2回、1450ppmのフッ素入り歯磨き剤を2センチしっかりだして、2分間磨きましょう。うがいは2回まで。できれば1回にします。
  5. 口腔乾燥の症状が強い方は、食後すぐにフッ素入り歯磨き剤を使って歯磨きをします。そのほかに、フッ素洗口剤を歯科医師と相談して使用してください。(口腔乾燥症でない方は、食事のたびの歯磨きは必要ありません)
  6. さらに、症状の強い方や、口臭が気になる方は、保湿剤を使用します。水分を摂った後に、ジェルタイプの保湿剤(サンスター:うるおい透明ジェル、ティーアンドケー:ぺプチサルジェントルマウスジェルなど)を塗る。症状の強い方は、ジェルタイプのスプレータイプの保湿剤(サンスター:バトラージェルスプレー、ライオン:アクアバランスなど)でお口の中を湿らせたのち、(できれば同じメーカーの)ジェルタイプの保湿剤(サンスター:うるおい透明ジェル、ウェルテック:コンクールマウスジェルなど)を塗ると乾燥感がかなり和らぐと思います。

まとめ

ドライマウスはさまざまな理由が絡みあって出てくる症状です。まずは、原因を確かめることは必要ですが、原因が分かったとしても、根本的に治療する方法は少ないのが現状です。

歯科で本当によく相談されるのが、ドライマウスによる(ご本人は初めは気づいていないことも多いですが)口臭です。その時初めて、ドライマウスに気づく方も少なくありません。

しかし、口臭ほど気にされていないにもかかわらず、大きな問題になるのがドライマウスによる虫歯の多発。

ドライマウスかも、と思ったら。口臭と虫歯の対策を、一緒に始めましょう!

 

 

関連記事