前歯の隙間をなかったことにできたら、すごくない? Case3 かなり大きな前歯の隙間

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

ここのところ、2回にわたって、歯と歯の間の隙間をコンポジットレジンという白い詰め物でふさぐ、という治療方法と考え方をご紹介してきました。本日は3回目。このシリーズとしては最終回になります。

1回目、2回目のご紹介はこちら↓

今日の主人公は、かなり大きな歯と歯の隙間をなくしたい!という、強い希望をお持ちの40代の患者さん、Sさんです。

私の医院でのお約束、初診でいらしてから、虫歯や歯周病の検査を行い、歯周病の初期治療(*)を一通り行ったのち、奥歯にあった虫歯を数本、治療しました。さあ、今日で治療は全て終了、少し歯周病の進行もあったSさんに、今後のメインテナンスのお話をしていたときのこと。

初期治療とは、虫歯治療や、歯周病手術などの本格的な治療に入る前に、その人にあったセルフケアの方法をご指導したり、バイオフィルム(プラーク)や歯石を取り除く、いわば「細菌のコントロール」を行う治療のこと。症状や口腔衛生状態によって、1〜6回ほどの来院をお願いすることがあります。

先生、実は私のこの前歯の隙間、ずっと気になっていたんです。ここを治療したいのですが、どんな方法がありますか?

思い切ってお話ししてくれた様子のSさん。おそらく本当に、ずっと気になっていたのでしょう。

初診から初期治療、そして虫歯治療と、きちんと通院され、あとは定期メインテナンス、というところになってから、長年の歯の悩みを打ち明けてくれたSさん。これまでの診療で、信頼していただけたのかとても嬉しく思いました。

この方も、昨日ご紹介したMさんと同じく、顎の大きさに対して歯の大きさが小さく、前歯の目立つところに隙間がありました。

しかも、少しアゴのずれもあるために、矯正治療で隙間を閉じるという方法には問題が出そうでした。

残りの選択肢は、被せ物をかぶせて歯の隙間を埋めるか、先日からご紹介しているコンポジットレジンで、隙間を埋めるか、のふたつです。

コンサルテーションで話し合ったこと。

*削ってセラミックを入れる利点、欠点(セラミックの耐久性と美しさの持続。無傷な歯を削る。外れることがある。歯軋りで欠けることがある)
*削らずにコンポジットレジンで埋める利点、欠点(歯を削らずに隙間を埋める、長い間に劣化する、メインテナンスで研磨や修理が必要になる可能性)
*矯正治療でできることとその限界

Sさんは、考えた末、「コンポジットレジンによる空隙の閉鎖」を選択されました。

かなり大きな隙間があること、コンポジットレジンによる閉鎖が数本に及ぶことから、慎重な計画が必要になります。まずはコンピューター上で形をデザインし、模型上で、ワックスアップ(ロウソクの材料、ロウをつかって、模型に形をデザイン)を行います。真ん中の歯が少し長いので、ちょっとだけ形を修正し、あとは隙間を埋めていきます。歯の大きさのバランスを取ることが大切です。

技工士さんによるワックスアップを参考に、再現したコンポジットレジンによる空撃閉鎖(下図)。
もともと歯が小さく、細い方だったために、コンポジットレジンで隙間を埋める修復をしても、不自然さがなく仕上げることができました。

麻酔なし、切削ほとんどなし、治療時間1時間です。

前回の2症例に比べると、隙間も大きく、難易度もあがりますが、その劇的な変化に患者さんの満足度も大きくなります。もちろん良いことばかりではなく、コンサルテーションで確認するべき点として、セラミックなどとちがい多少の経年劣化、変色、微細な欠けなどがみられること、そのためメインテナンスで研磨をしたり、修正をしたりと言った「手入れ」が必要なことが挙げられます。しかし、適切な最小限の手入れを行いながら、大きく歯を削ることなく長く使うことができれば、それは素晴らしいことではないでしょうか。

このような治療はMI(Minimal Intervention:最小限の侵襲による治療)と言われ、世界中で取り組まれている最新治療です。今回のように隙間が大きく、数本に治療が及ぶ場合は特に、他の選択肢も含めて担当の歯科医師と納得が行くまで相談することが治療成功の秘訣です。

これまで3回にわたって、前歯の隙間をコンポジットレジンという白い材料をつかって埋める方法について、実際の症例をもとに、お話ししてきました。多くの症状が、大きな費用と期間がかかる矯正治療や、歯を大きく削るセラミック治療だけではなく、コンポジットレジンによる治療でも大きく改善することがわかっていただけたのではないかと思います。

見る人によっては、個性的、親しみやすい、セクシー(!)とも言われる前歯の隙間ですが、この状態を気にしている方がとても多いことも事実。もしあなたが、前歯の隙間を気にしていたら。そして、その状態が「治せる」こと、その方法を知らなかったら。思い切って相談してくれたSさんのように、ぜひあなたのかかりつけの歯科医師に相談してみてください。

今回も、Sさんのご厚意により、同意のもと症例写真を上げさせていただいております。「私の歯の写真でよければ、ぜひ使ってください!」と言って下さったお気持ちに、心より感謝いたします。

 

 

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