抜いた歯にこころから感謝 〜第83回 歯科医師夫婦のつれづれ手帖〜

歯科医師夫婦のつれづれ手帖は、歯科医院を共に営む夫(真面目なのでここではマジオ君)とともに、医院を訪れる患者さんに自分たちの人となりを知ってもらいたいという気持ちから、2014年から院内新聞の一角に書き始めた小さな文章。
なんだかんだで続いています。
ルールは2つだけ。
1 必ず毎月、どちらかが書く。
2 内容は、歯科治療以外の事とする。(時々ルール違反あり)

 

第83回 抜いた歯にこころから感謝

当院で乳歯を抜いたことのある方やそのおうちの方なら、上の「乳歯ケース」、見たことがありますよね。 これは歯科ではよく使われている、抜歯した歯を入れて持ち帰るためのケース。上の部分をぱかん、とあけて、抜い た乳歯をきれいにして入れ、ついている赤や黄色の輪ゴムでお子様の手首にブレスレットの様につけてあげます。 頑張って抜歯をしたお子様は、ほっとしたと同時に、この可愛い入れ物をもらって、本当に嬉しそうな顔をしてくれるものです。

先日の読売新聞に、この歯の形の入れ物のことを書いた読者からのエッセイが載っていました。てっきり子供の歯の話かと思い 読み始めましたが、このケースに入れる歯の持ち主は、小さな子供ではなくなんと 60 代の女性。とうとう一本の歯が ダメになって、抜くことになってしまったのですが、歯医者さんがこの可愛らしい歯の形をしたケースに抜いた歯を入れてくれたのだそうです。料理上手な旦那さんの料理を味わうなど、「今まで 60 年近く、一緒に楽しい時も悲しい時 も支えてくれたのかと思ったら、目頭が熱くなった。」1本の歯にここまで感謝できるこの方も、最後に大切にケースに入れてくれた歯科医師も、本当に素敵ではありませんか。

少し前までは、正直、歯を大切にしている人は少数派だと感じていました。しかし、歯科医療従事者や自治体、マスコミなどから多くの情報が発信されるようになったことで、ここ数年は歯科で定期的にメインテナンスを受ける方も増え、それと同時に患者さんと歯科医院の距離もとても近くなった様に思います。たくさんの歯を長く残すことができる様になりましたが、何本かの歯は寿命の前に力尽きることもあります。その時は、この方の様に「今までありがとう」という気持ちで、自分を育て、支えてくれた歯にさようならを言うことがでできたら、とても素敵ですよね。ご希望の方(年齢制限なし!)には、特別にお子様用のケースに入れてあげますので、遠慮なく言ってくださいね。(^-^)

*ちなみに、市販の乳歯ケースは驚くほどの種類が売られています。(下写真:アマゾン公式サイトより)大人の歯はなるべく抜きたくないけれど、お子様の乳 歯はこんな可愛らしいケースに入れて、とっておくのもまた楽しいですね。うちの場合は3姉弟の歯を同じケースに入れてしまい、訳がわからなくなってしまったので、買う時はケチらずに一人分ずつ、お願いしますね。 (文 のあみ)

 

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