【ペリオ大学】自分の「オリジナル歯周病リスク」を知ろう:その2

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

45歳以上の過半数が罹患しているといわれる歯周病。

しかし、一部の遺伝的要因や特異性の細菌感染による特殊な歯周病を除けば、ほとんどの歯周病は予防できる病気でもあります。

そのため、歯周病と診断されていなくても、将来歯周病へと進行していく可能性を将来の「リスク」として把握しておくことは、歯科でのメインテナンスでも重要視しています。「歯科のことはよくわからない」であろうあなたも、自分のリスクを知っておきましょう。

今日は、前回のペリオ大学でお話しした、歯周病のリスクを考えるお話の続きです。

Contents

歯周病のリスクとは

前回の記事でで、歯周病になりやすい方(または進行しやすい方)と、なりにくい方がいるというお話をしました。その筆頭に来るのが、下記の全身的に影響を及ぼす原因のある方です。

① 血液検査でよく測定されているCRPの値が1mg/L以上(1〜3mg:中等度の進行、3mg以上:急激な進行の恐れあり)
② 喫煙者(1日10本未満:中等度の進行、10本以上:急速な進行の恐れあり)
③ 糖尿病のある方(HbA1C 7%未満:中等度の進行、7%以上:急速な進行の恐れあり)

*歯周病とそのなりやすさを書いた前回の記事はこちら↓

特に、糖尿病のある方は、歯周病を悪化させるとともに、歯周病が糖尿病を悪化させるという双方向の悪影響がわかっていますので、歯周病の定期管理を早急に生活に取り入れていただくのがとても大切です。

しかし、上記の全身性の原因のほかに、お口の中にも、歯周病を引き起こす「原因」が潜んでいます。

糖尿病や喫煙は、歯科に行かなくても自分で歯周病のリスクとして把握することができますが、お口の中の原因については、歯科医院で指摘してもらわなければなかなか気づくことはありません。ここから先は、歯科医院での検診が大切になってきます。

お口の中の歯周病リスクを知ろう

歯科医院に行って、「歯周病の検査」をしたことがある方もいらっしゃるかと思います。「プローブ」と呼ばれる目盛りのついた器具を歯と歯ぐきの境目に入れて、その深さを調べます。健康な歯ぐきの数値は、3ミリ以内。

ところが、歯と歯ぐきの境目の溝に歯周病菌が増えて悪さを始めると、歯を支えている骨に影響を与えて骨が溶け始め、それに伴い歯と歯ぐきの境目の溝が深く広がっていきます(歯周ポケット)。こうなると、プローブで測るポケットの深さは4ミリ、5ミリ、と増えていきます。そうなってしまうと、その部位はすでに歯周病に罹患している、という診断になります。

それに対して、「リスク」とは、まだ歯周病になっていないけれど、これから歯周病になったり進行していく危険性が高いという状態。どのようなものがあるのでしょう。

1 歯ぐきからの出血
検査をしたときに歯ぐきから出血のある部位は、歯ぐきに炎症が起こっている証拠。将来20〜30%が歯周病に移行すると言われています。

2 歯周ポケットの中に歯石が入り込んでいる
歯ぐきの奥深くに硬い歯石がこびりついていると、細菌がよりくっつきやすくなり、ますます元気に活動してしまいます。

3 かぶせものやつめものがきちんと歯に適合していない
このような状態も、細菌が入り込みやすくなり、歯や歯ぐきに影響を及ぼします。

4 歯磨きが不得意で、磨き残しが多い
これは、意外と本人は気づいていないのです。歯を磨かない人はいないと思いますが、磨き残しが多くバイオフィルム(プラーク)がべったり、という方は多くいます。目立つところ、得意なところだけ磨いている、という状態の方も。

5 生まれつきの歯の根元の形や、お口の中のヒダや歯肉の形など
歯周病になりやすい歯の根元の形や口腔粘膜の形態を持っている方がいます(根面溝、エナメル突起、小帯の付着異常など)。これらはご自分ではどうにもならないので、歯科医院でチェックして、歯周病が起こってこないか経過を見ていきます。

これらが、歯周病に進行しやすいといわれるお口の中に見られる主なリスクです。どうでしょうか、最後の5番を除けば、ご自分の歯の磨き方を確認したり、歯科医院に定期メインテナンスに通院することで、改善できることばかりではありませんか?

予防が難しい特殊な歯周病

多くの歯周病は、歯と歯ぐきの間の溝(深くなってくると歯周ポケット)に汚れをためないようにケアすることで、予防することが可能です。
しかし、まれではありますが、身体は健康なのに若い時期(10~30代)から重篤な歯周病に陥る特殊な歯周病があります。1000人に1人ほどの発生率があるほか、家族性に見られることも多いため、万が一の発症の際は、専門機関での診察、および家族も含めての検診が必要です。
また、ダウン症などの遺伝疾患でも、歯周病の進行がみられることがあります。

最後に

歯周病がどういうものなのか、よくわからないという方は多いと思います。特に痛みもないため、進行するまで気づかないということも非常に多いです。この記事で、少しでも「あ、そういうことなのね」とわかっていただけたら、嬉しく思います。
歯周病に関連する主な疾患を持つ方や、タバコを吸う方はもちろん、特にそのような問題のない方でも、歯周病の検診を受ける習慣をつけて、歯周病のリスクがないか、そしてリスクを減らす手立てはないか、相談できる歯科医院を見つけましょう。その行動が、大袈裟でなく、10年後、20年後の未来を変えるかもしれません。

 

 

 

 

 

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