みくびってはいけない。舌の動きと不正咬合。

舌突出癖(Tongue Thrust) とは

歯並びの不正のほとんどが、直接的にはお口の周りの「筋肉」の動き、間接的にはそれを引き起こす「口呼吸」や「低位舌」、体の姿勢などが原因になっていることは、あまり知られていないんです。

しかし、下の写真を見れば、いかに舌の動きが噛み合わせに影響するのかが一目瞭然!!。

写真は、1年生の女の子。「唾をのんでみて」というと、舌が見事に歯と歯の間ににゅっと出てきます。

嚥下(飲み込み)せずに、黙っていても舌が歯と歯の間に挟まれていますね。

これは、「低位舌(ていいぜつ)」。

本来、舌は口を閉じたとき、上顎の天井に収まっています。しかし、上あごに舌がおさまらずに、下方にだらん、と落ちている状態が「低位舌」です。この誤った舌の位置が、唾を飲んだりべものや飲み物を飲み込む「嚥下」時の異常な動きにつながってしまうと言われています。

「舌突出癖(Tongue Thrust)」も、低位舌による誤った舌の動きの一つ。

飲み込むたびに舌が前に出てしまいます。

この動きを是正しない限り、写真のような噛み合わせ「開咬(かいこう)」は、治ることはないんですよ。

このお子様は、舌の癖がとても強かったので、ご両親には原因を説明し、舌の動きが改善できなければうまく治らない可能性もあることをご了承のうえ、筋機能訓練をメインにした治療を始めました。

舌を突出する癖があるお子様は、必ずと言っていいほど頬の力も強く、頬の筋肉に押されて顎がとても狭くなっています。

まずは上あごを拡大装置でしっかりと広げて、筋機能訓練とマイオブレース(下写真)の装着を始めました。

1年後、上あごが広がり、少しずつですが、開咬の改善がみられますよ(やった!)。

治療開始2年後。マイオブレースのおかげで、舌の突出が抑えられ、噛み合わせが閉じてきました。

この時期になると、マイオブレースを入れているのは夜だけ。

「マッスルメモリー」って言葉、この間筋トレの先生に聞いたんですが、まさに「筋肉は一度動きを教えたら、覚えている」。ちょっと筋トレのマッスルメモリーとは意味合いが違うかもしれませんが、マイオブレースで覚えた筋肉の動きを、体が覚えている、そんな気がします。

さて、このお子様は、上あごをもう少し成長させる拡大装置を再度使用したのち、経過観察に入りました。

小3で経過観察に入り、現在小学5年生。

「治らないかもしれないな」と思ったこの女の子は、お母さんと一緒に頑張りを見せてくれて、とても綺麗な歯並びになりました。

2年以上の時間をかけて、筋機能の改善に取り組んだ結果です。

 

舌の力を取り除くことで、美しい噛み合わせを。

頬筋の力を取り除くことで立体的に広がったブロードスマイル(*)を。

すばらしい宝物を手に入れてくれました。

*ブロードスマイルとは?気になったら、こちらの記事も読んでみてくださいね。

しっかりと指示を守り、通院していただいたこと、そしてブログへの掲載を快く承諾いただいたこと、深く感謝いたします。

医)颯爽 まつうら歯科クリニック

関連記事