その虫歯、すぐ治療しますか? 〜意外と知られていない、歯科治療の正しい順序〜

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

盛岡のあるある・・・・突然、そう、突然に肌寒くなってきました!

昨日まで、家では半袖短パンでうろついていられたのに、そしてまだまだ30度を超えている地域も多いというのに・・・
朝起きて感じた突然の寒さに「ああ、盛岡の夏も終わってしまった」と毎年の一抹の寂しさを味わいました。
みなさま、体調には気をつけましょうね。

さて、本日は、私がいつも初めての患者さんにお会いしてから、必要な治療を行い、そして定期検診(歯科メインテナンス)に移行するまでの流れをお話ししたいと思います。これは、歯のある方であれば原則全ての方が対象です。

Contents

1。症状のある部分への処置

歯科医院を訪れる理由は人それぞれですが、当院で2番目に多い初診の方の訴えが、なんらかの「歯の不具合」です。

主に、「歯が痛い」「被せ物が取れた」「歯茎が腫れた」など。
実際に痛い、不自由、など困っているところがある状態でいらっしゃいます。

その時は、状態をよく聞いて、可及的に痛みを取り除いたり、機能を回復させる処置を行います。
虫歯を取り除いたり、取れた被せ物を戻したり、仮りの歯を入れたりします。

これが、「応急処置」です。あくまでも、今困っているところを当面持たせるための、一時的な治療です。

2。お口の中を徹底検査

先ほど、当院を訪れる初診の患者さんで、2番目に多い訴えが、「歯の不具合」とお話しました。

では、1番多い訴えはなんでしょう?

それは

「お口全体を検査して欲しい」

なんです。

特に痛いところや困っているところはないけれど、どこか悪いところがないか、調べて欲しい、というものです。

そういう健康意識の高い方が増えている背景としては、テレビや週刊誌、女性雑誌などの影響、そして何より、歯科に治療ではなくメインテナンスで通う方が増えてきたために、その方々からの紹介が増えたということもあるのではないかと推測しています。

特に、歯科ユニット(椅子)の半分以上をメンテナンス患者さんが占めている当院では、家族や友人の姿に「自分も」と思ってくださる方が多いということなのかなと、ありがたく思っています。

このような方は、特に困っていることはないので、初めての日から、しっかりとお口の中全体の検査をしていきます。
ちなみに、1回目に応急処置があった方は、2回目の来院時にこの検査を行います。

  1. レントゲン診査
  2. 歯周病の検査
  3. 口腔内の写真(噛んだ状態から、奥歯の裏側の写真まで、全部で12枚の写真を撮ります)
  4. 拡大鏡を用いて、口腔内の視診

検査の結果をお話しし、今後の治療の流れ(必要な場合)などをお話しし、1時間ほどで検査は終了です。
ちなみに、すべて保険内でできる検査です。全部行っても、3割負担の方で4000円ほどです。

3。歯周病治療

検査が終われば、まずは歯石などの硬い汚れや、歯ブラシが届かない部位のプラーク(歯垢)を除去する治療を行います。

歯ブラシがうまくできるようにアドバイスしたり、その方に合った使いやすい口腔ケア用品をお話したりします。

歯周病が進んでいる方には、さらに、歯と歯茎の境目に奥深く入り込んだバイキンの汚れ(バイオフィルム)を、専用の機械で取り除く治療を数回に分けて行うこともあります。

このステージを「初期治療」と呼び、ここで活躍するのが「歯科衛生士」。歯の周りの汚れを、効率的に痛くなく(歯周病が進んで痛みがある方には、歯科医師が麻酔を施します)取り除く専門的な訓練を受けています。

虫歯や、被せ物の治療がある場合は、この歯周病の治療とセルフケアの確立(初期治療)がしっかりと終了してから。

歯周病が進んでいる方は、この治療だけでも6〜7回の通院が必要になることもあるんです。保険が効いても、一回の治療で1000〜2000円ほど(3割負担)の費用もかかります。
しかし、ここで、脱落しないでください!そうならないように、歯科医師、歯科衛生士、そして受付など、スタッフ全員で必要な説明は何度も行い、患者さんを励まします。

4。虫歯治療

お待たせしました。

ここでやっと、必要な方は虫歯治療や、被せ物、入れ歯を入れる等、「歯科医院でやることといえば」の筆頭に出てくる治療の数々が登場します。初めの検査や、歯周病治療の状況に基づいて、お一人お一人の治療の計画を一緒に立てていきます。

歯科治療は、保険内でできる治療も多いですが、保険が効かない治療もあり、それぞれの利点、欠点をお話しし、その方にとって最良の方法を模索する必要があります。

治療の相談は、当院では歯科医師がすべて対応しますが、コーディネーターのような専門的にカウンセリングを勉強した方が受け持つ場合もあるかと思います。大切なのは、初めから保険外の治療は絶対受けない、と決めている場合を除いて、治療のオプションと、それぞれの利点欠点ををすべて話してもらうこと。

さらには、その医院で対応できない治療法があっても、方法が存在する限りは、オプションとして話をし、患者さんの希望があればそれができる医院に紹介する。それが、歯科医師としての責任だと思っています。

もう1点、私がとても大切にしていること。それは、「小さな虫歯歯削らずに様子を見ていく」ということ。

メインテナンスに通っていただけさえすれば、進行性のものかどうかを見極めることができ、治療するのはその後でも大丈夫。または、予防処置を続けることで、ずっと削らないで済むこともあります。すぐに大切な歯を削るのかどうか。そこにも、歯科医師としての大きな責任があるのです。

5。メインテナンス

歯周病治療が終了し、虫歯の治療も全て終わったら、さらば、歯科医院!!

私、頑張った〜。もう2度と、こんなところに来ないようにするわ〜。

身も心も軽く、ハンカチを振って歯科医院を後にする。・・・・・・これは、もう昭和の日本の話。

ここからが、本当の歯科医院とのお付き合いの始まりです。

そして、今後あなたが会いにくるのは、「歯科衛生士」です。

 

あなたの状態にあわせた頻度で、歯科医院に通院していただき、治療した歯の状態を確認したり、磨き残しのある部分の汚れを落とし、必要に応じて口腔ケアを指導します。

全て終了してから、新しい虫歯がないかチェック。

今日の汚れ具合や、歯肉の状態によって、次の来院日を決めます。

まとめ

長くなりましたが最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これが、当院で毎日のようにお話しさせていただいている、初診の方の治療の流れです。

すぐにでも虫歯を治療して欲しい!なんですぐに治療してくれないの?

1回目に検査だけで終了し、次回から歯周病の治療、などど申し上げると、もう来なくなってしまう方もまれにいらっしゃいます。

その気持ちは、とてもよくわかります。

しかし、虫歯になった原因を確かめずに、治療を繰り返しているだけでは、あなたの歯は削られる一方。

歯周病が進み、口臭が出てきたり、歯がぐらついてくるかもしれません。後から慌てても、遅いのです。

しっかりとした検査→歯周病治療と口腔ケア指導→虫歯治療→メインテナンス

この流れに、しっかりと乗ってください。しばらく歯科通院がない方は、まずは、歯科の扉を開くところからが第一歩です。

 

 

 

 

 

 

 

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