【ペリオ大学】根元が出た歯はカッコ悪い!はぐき下がりの予防と治療法とは

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

「ペリオ」とは、歯科用語で「歯周病」という意味です。歯周病というのは、昔でいう「しそうのうろう」。「歯」そのものではなく、歯を支えている骨や歯ぐき(歯周組織)が炎症によってダメージを受ける状態で、30代以降の80%が何らかの歯肉の病気に罹患している「国民病」と言われています。

このブログでは、そんな歯を支えてくれている縁の下の力持ち、歯周組織に関する話題を、「ペリオ大学」と名付けて、歯ぐきに伴う病気や症状について、さまざまなお話をしてこうと思います。

さて、ペリオ大学の1日目。本日は、年齢を問わずに気になることが多い「歯ぐきの下がり」についての話題です。

先日の記事で、私の歯科医院を初めて訪れる方の来院理由で一番多いのが、「歯が痛い」でも、「詰め物が取れた」でもなく、特に困っていることはないけれど「お口全体の検診をしてほしい」というご希望だというお話をしました。

しかしこれは厳密に言えば、すごく困っているわけではないけれど、何かちょっと気になることがあるから、久しぶりの歯科のドアを叩くことになった方が多い、という方が正確かもしれません。きっかけは、家族や友人が歯科に通い始めたことだったり、ふと他人の口臭が気になった時だったり、いつもじゃないけどなんだか歯がしみるようになったことだったり。

そんな「そこまでじゃないけどなんか気になる」という症状の中でも、でとても多いのが、「最近はぐきが下がってきた感じがする」「歯ぐきが痩せてきた気がする」というものです。特に、40の声を聞く頃になってくると、自分の歯ぐきの形の変化に気づいて、気になるようになってくる方が少なくありません。

検診理由でかなり多い訴え「歯ぐき下がり」とは

最近テレビコマーシャルなどで映像を見たことがある方も多いかと思いますが、歯ぐき下がりってなあに?と思う方のために、簡単にお話しますね。歯ぐき下がりとは、歯科では「歯肉退縮」と言われて、とても多い症状です。

もともと、歯肉にしっかりと覆われているべき歯の根本の部分が露出してきて、歯が長くなったように感じたり、実際に歯の根本が見えてきたりして、見た目が気になるほか、「何かの病気ではないか」と気になることが多いようです。

「なんで体は痩せないのに、歯ぐきは痩せるのかしら?先生!?」

よく聞かれる嘆き節です。歯ぐきが下がると、老けた印象を与えてしまうとともに、物が挟まりやすくなったり、硬いエナメル質に守られていない歯の根本が虫歯になってしまったりと、残念なことだらけなのです。

歯ぐきが下がる3つの原因

原因は、主に三つあります。この二つの原因を見極めることが、その後の予防、治療に対して大変重要になります。

一つは、ズバリ、歯周病です。歯周病というのは、歯と歯ぐきの境目にある溝に歯周病菌が増えて、歯を支えている骨が溶けてくる病気です。
骨が溶けると、一緒に歯ぐきも下がり、歯の根元が露出してきます。

もう一つは、間違った歯磨きによる「磨きすぎ」。歯ブラシをあてる圧が強すぎることが大きな原因になります。これは、歯ブラシを強くあててゴシゴシ磨けば誰もが歯ぐきが下がるわけではなく、「下がりやすい方」がいます。いわゆる「骨や歯ぐきが薄い方」です。ご自分の歯ぐきが厚いのか?薄いのか?これは、「体が太っている」とか、「つらの皮が厚い」とは全く関係ありませんのでご注意を。こればかりは、歯科医師に見てもらう必要があります。

最後は、2番目と似ていますが、歯並びの不正などで、歯が本来の歯列から飛び出していると、骨のサポートが少なくなり、歯ぐきが下がりやすくなります。生まれつき、の要素と言えます。

そのほか、強く噛み締めたり、歯ぎしりをする癖のある方にも、歯ぐき下がりが起きやすいという意見もありますが、この癖だけで歯ぐきが下がることは少ないと思われます。ただ、歯ぐき下がりの直接の原因とならなくても、歯ぎしりやくいしばりは、あごの関節にダメージを与えたり、歯をすりへらす原因になりますので、ひどい場合には対応する必要はあります。

下がった歯ぐきを戻して若返りたい!

主な三つの歯ぐき下がりの原因を特定して、まずは原因を取り除くことから始めます。

歯周病
歯周病の治療を行います。特に、正しい歯ブラシの方法の獲得と、歯のまわりのバイオフィルム(細菌のかたまり)の除去に時間をかけ  ます。
圧の強すぎる歯磨き
歯ブラシの選定および正しい歯ブラシの方法を覚えます。歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目の溝に強く当てないように、指導します。「斜め45度に歯ぐきの溝に向かってあてる」という「バス法」という歯みがきの方法が色々なところで出ていますが、歯ぐきが薄く、歯ぐき下がりが始まっている方には良くありません。バス方とは反対、歯ブラシの毛先を歯の噛む面の方向にむけて、歯を磨くようにします。
生まれつきの歯と骨の位置の関係(歯ならびの不正を含む)
歯並びが原因と思われる部位は、矯正治療で歯ならびを治すことで、原因の除去になります。矯正治療ができない場合は、上記と同じくブラッシング方法に気をつけたり、場合によっては下記にご紹介する手術を検討したりします。

原因をできるだけ取り除く治療を早く始めることができれば、軽度の歯ぐき下りであれば、進行を食い止めることが十分に可能です。

しかし、軽度でも重度でも、一度下がってしまった歯ぐきを完全に元に戻すことは難しいのが現状。ご自分の歯ぐきの状態(歯周病があるのか、歯ぐきが生まれつき薄いのか、など)を確認し、「予防」また進行を止めるのが現時点では一番の方法です。

歯ぐきの下がりを手術で回復できる?

一度下がってしまった歯ぐきは、自然には治りません。元に戻すのは難しいと申しましたが、適応があれば、「根面被覆術」という手術で下がった歯ぐきを回復させることができます。露出した歯の根を覆うための歯肉を、上あごの裏側から切り出して移植する方法です。上手くいけば、とても自然に、歯の根元を覆って若返ることも可能なすばらしい手法です。

しかし、適応できる症状は限られ、手術に対応できる歯科医師も多くはありません。歯周病などの炎症がしっかりと取り除かれていることも大事な条件になります。

また、「エムドゲイン」と呼ばれる薬で、歯周病で失った骨を回復させる再生療法を行うことで、歯ぐきの下がりを回復させることも可能ですが、こちらも骨の形など適応が限られます。

適応があればそのような対応も可能ですが、やはり結局は、予防に力を入れることが得策、ということになります。

まとめ

初診のお悩みで意外に多い「歯ぐきの下がり」について、お話しました。目立つところが下がってくると、本人も気付きやすく、かくれた歯周病などの病気に対応できることもありますので、早めの歯科の受診をお勧めします。

歯ぐきが下がってきたのか、自分ではわからないという方は、歯科で口腔内写真を撮ってもらうと良いでしょう。歯科メインテナンスに力を入れている医院では、必ず定期的に口腔内の写真をとって記録しています。写真を見ることで、自分ではわからない変化に気付いたり、または下がったような気がしたけどそうでもなかった、ということもありますので、ぜひ、写真を活用してくださいね。

それではまた〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

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