40代からのオーダーメイド歯科メインテナンス① 〜唾液を検査してみる〜

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

今朝も雨がしとしと降っていました。

草ぼうぼう、だけどなんとなく気持ちのいい小道を通って、今日もお仕事に出かけます。

ここのところ、歯科治療からメインテナンスの流れ、そして「歯科衛生士(デンタルハイジーニスト)」という歯科医院になくてはならない職業のこと、とブログを投稿してきましたが、本日からは、さらに数日にわたり、歯科メインテナンスについて、もう少し掘り下げて行きたいと思います。特に、歯周病や虫歯が急激に悪化することもある40代以降、でも虫歯も歯周病も絶対なりたくない!という美意識の高い皆様に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

Contents

なんとなく行っていませんか?メインテナンス

メインテナンスの意義は数々あれど、1番の理由はもちろん、「予防のため」。

もしくは、「歯科医院で、歯科医師や歯科衛生士に、来るようにと言われたから。」

そう答える方が多いでしょう。昨日の投稿で、「あまり深く考えずに、まずは歯科医院に定期メインテナンスに行って、気持ちよく過ごす習慣をつけてください」という内容の話をしました。そう、それでいいんですよ。まずは、始めて欲しい。そして続けて欲しい。そこからが大事な大事な、第一歩なのですから。

しかし、今日は、初心者コースを卒業して、自分のメインテナンスを、自分だけのオーダーメイドにするためのお話を少しだけいたします。

特に、40代以上の大人の方で、長い時間歯科医院に定期通院する習慣のなかった方、なぜか定期メインテナンスに通っているのにちょくちょく虫歯ができてしまう方に知って欲しい検査があります。

それは、虫歯リスク検査。

唾液をとって、それを調べることで、虫歯のなりやすさがわかるというスグレモノです。

唾液は、消化に欠かすことのできない役割を担っていると同時に、歯を虫歯から守ってくれるとても重要な役目も持っています。

加齢とともに唾液は減ってしまうことがあり、急激に虫歯が増えた、口の渇きを感じる、もしくは舌が痛い、など、さまざまな症状が現れます。

唾液の検査をすることで、虫歯のリスクがわかり、その方に応じた対策を講じることができる、というわけです。

これが、「オーダーメイドのメインテナンス」の大きな柱の一つです。

唾液をみれば、原因がわかる。

虫歯リスク検査(唾液検査)でわかること。

  1. 唾液の量
    5分間専用のガムを噛んで唾液を出します。5ml以上の唾液がでれば正常。それ以下だと、唾液量の低下が疑われます。軽度であれば水分の取り方など生活習慣を見直すだけでも変化がありますが、唾液を極端に少なくしている原因(薬の服用や、病気など)が疑われる場合は専門医に診察をしてもらうことが必要になる場合もあります。原因によっては、唾液を増やすような内服薬や、漢方薬を処方してもらえることもあります。
  2. 唾液の虫歯抑制力
    唾液には、飲食後に急激に酸性に傾いたお口のなかを、中性にもどしてくれる力があります。歯は酸に弱いので、唾液のこの機能のおかげで虫歯から守られているのです。しかし、この唾液の力がとても弱い方がいらっしゃいます。唾液検査で、唾液の力が弱く、虫歯がよくできてしまう方には、口腔内を中性に戻すようなうがい薬や歯磨き剤を処方して、使用していただきます。
  3. 2種類の細菌の量
    虫歯は、さまざまな細菌に影響をうけて起こるとされていますが、その主な菌のうち、ミュータンス菌とラクトバチラス菌という細菌の量がわかります。この量がさほど多くない方であれば、食事に神経質になる必要はありませんが、2種類の菌が両方とも基準以上に多い方は、短期間の間食制限などの食事指導が必要になる場合もあります。
  4. フッ素の使用状況
    これは、唾液とは関係ありませんが、フッ素をどのように口腔ケアに取り入れているかで、虫歯のなりやすさがわかります。フッ素に対する正しい知識を持ち、歯科衛生士の指導のもと、リスクに合わせたフッ素の使用が大切です。
  5. 食事内容
    休日を含んだ3日間の食事の記録を確認します。「私は甘いものなんか食べていないわよ」という方でも、しっかりと記録をつけてみると、以外とちょこちょこと糖分を含んだものを口にしていることがあるものです。
  6. 現在の虫歯や、過去の治療した歯の数
    実は、これが大きなリスクの証拠になります。現在の虫歯だけでなく、過去に治療したり、抜いてしまった歯が多い方は、これからも虫歯になる可能性が高くなります。

むしばリスク検査をうけることで、こんなにも多くの情報を得ることができます。歯磨きを真面目にしないのになぜか虫歯にならない人がいたり、全く逆もしかり。自分の状態にあった口腔ケア製品を使用したり、定期メインテナンスの頻度を増やす(もしくは減らす)など、リスクに応じた歯科医院への通い方がわかるのです。

こちらの検査は保険が効かないため、当院では材料代3,000円をいただいて行っています。

検査を元に、メインテナンスをオーダーメイドに。

唾液検査をすれば、お一人お一人のリスクに合わせたメインテナンスができるようになります。

例を紹介します。

N.Sさん(43歳女性)
現在は虫歯ないが、治療経験あり。小さな子供がいるので、リスク検査をご希望。

検査結果
*ミュータンス菌が多い。
*唾液の量がやや少ない。
*歯磨き粉にフッ素が入っていない

対策
*ミュータンス菌を減らすためのブラッシング指導。プラークスコア10%以下を目指してセルフブラッシングのトレーニング。
*お子さんが小さいうちは、キシリトールガムを1日4回。ミュータンス菌を減らすことを試みる。
*水を少量ずつ摂ることを指導。
*1450ppmのフッ素配合歯磨き粉を使用し、1日2回の歯磨きを行う。
*メインテナンスは3ヶ月に一回。プラークスコアが改善したため半年に伸ばしても良いが、お子さんが小さいうちは3ヶ月に一回を希望されている。

M.Mさん(50歳)
虫歯あり。古い銀歯の中で虫歯に。

検査結果
*ラクトバチラス菌、ミュータンス菌とも多い。
*磨き残しが多い。
*仕事中の午後に一回、お茶とお菓子を食べる習慣あり。

対策
*うまく合っていない歯の詰め物や被せ物を外して、ぴったりとした新しい詰め物に取り替える。
*歯ブラシの練習。プラークスコア10%以下を目指す。
*間食は、歯科衛生士の指導(月に一回、3ヶ月)が終わるまで控える。
*1450PPMの歯磨き粉を使用するとともに、3ヶ月に一回の高濃度フッ素を歯科医院で塗布する。
*メインテナンスは初め毎月、プラークスコアの改善をみて、3ヶ月へ。1年後には、半年に一回になった。

マイハイジースト(かかりつけの歯科衛生士)は大人の女性の味方!

プロである以上、患者さんが女性だから、男性だから、子供だから、などと言ってはいられないのが掟です。

しかし、女性が多く、子育て経験があることも多い歯科衛生士は、やはり女性の患者さんにとってはなんでも話せる強い味方。

女性はライフステージによって、口腔内の状況も変わりやすく、その時その時にあったメインテナンスが求められます。

唾液検査は、「あれ?なんか違う、どうしたんだろう」といった変化の原因を見つけることができる、簡単で優れた検査です。

自分だけのオーダーメイドメインテナンスを受けるためにも、適切に取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

関連記事