【ミニマル歯科治療】エナメル質をいかに保存するか。そこを本気で考えて欲しい。

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

今日、盛岡は雪が降りました。昼過ぎに降り出した雪がどんどん降り積り、帰る頃には車にこんもりとマシュマロのような雪が積もっておりました。

雪を払って、屋根に少し雪が残っていましたが・・・早く帰りたいのもあり、そのまま出発。

自宅目指して運転していると・・・・「どさどさっ」

あったまった車の屋根から、雪がもさもさとフロントガラスに滑り降りてきました。

「うわあ〜大変!!」ワイパーを一番速いモードにしても、屋根からどんどん雪が落ちてくる。

その景色は、自分が小さな頃のある情景を思い出させました。

それは、「滑り落ち続ける雪と、母の怒鳴り声」。

雪国秋田に住んでいた私は、子供の頃から、「親の車の雪を払う」という役割を仰せつかっていました。うちには「車庫」がなく、中学校の教師として働いていた両親の車の上に降り積もった雪を、出勤前にはらっておくという役目でした。

しかし体が小さく、車の屋根の雪はなかなかおろせない。面倒くさいから屋根の雪はこのくらいにしておこう。ある日、屋根に雪を残したまま、母と一緒に車でどこかに出発しました。

車が温まると、屋根に残った雪が溶けて、フロントガラスにどさどさと落ちてきます。

「こらあ〜っ!!屋根の雪、おろさなかったな!!」

今思えば、小さな子供に雪を払わせておいて、怒るなんでひどい、と思うのですが、当時は「ごめんなさい!!」と謝っていましたね〜。

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そんな、もと「バリキャリ」のお口の中は

そんな「バリバリ キャリアウーマン」だった母は、歯が弱く、職場の近くの歯科医院で多くの歯を削って「セラミック」などの良い材料で、被せ物をしていました。歯が弱い、というよりも、時代のせいもあって、定期メインンテナンスで予防する、という考え方は患者にも歯科医師にもなく、虫歯になっては削り、削っては虫歯になり、を繰り返していたのだろうと容易に想像がつきます。

現在、80代に突入した母の口腔内をみると、当時被せた「セラミック」や、私が歯科医になってから被せ直した被せもののふちから、どんどん虫歯になっているのです。

「セラミックは、一番いい材料なんじゃないの?なのに何故?」と思う方もいるでしょう。

その原因は、今の私にはとてもよくわかります。

当時の歯科医師を責めるつもりはありませんが、原因は、「歯を削りすぎたこと」。

当時の被せ物をするための「歯の削り方」は、それはそれは恐ろしいほど歯を削ります。実は今でも、一般的な保険診療で行われる歯の削り方は、当時とあまり変わりありません。

歯の命。「エナメル質」を温存するためには

下の絵を見てください。一番表層にある「エナメル質」。

エナメル、という名前でわかる通り、ダイヤモンドと同じくらいの硬さを持ち、ツヤツヤと真珠のように輝く、人間の臓器の中で最も美しいものではないかと思います。

しかし、虫歯などで「被せもの」を被せるために、このエナメル質と、そのさらに内側の「象牙質」まで、削り込まなければならないのが、従来型のセラミックや保険の銀歯やプラスチックの治療です。

このようにエナメル質をすっかり削り取ってしまうと、柔らかい象牙質(上図の黄色い部分)が露出して、歯はとても弱くなります。若いうちはあまり問題を起こさないのですが、年齢を重ねて唾液の量が減ったり、歯磨きがうまくできなくなってくると、あっという間に被せ物のフチから虫歯が進んできます。

しかし、「接着」の技術が発達した現在では、下記のような「エナメル質を残す」治療で、最表面にある硬くて丈夫なエナメル質を残して被せ物を被せることも可能になりました。

私の母の歯も、このようにエナメル質を残した治療をしていれば、今頃被せ物のフチからどんどん虫歯になり、やり直しをくりかえす、ということにはならなかったはずです。

エナメル質は、それほど歯を守ってくれる大切なものであり、極力残したいものなのです。

エナメル質を保存する被せ物「オーバーレイ」

「クラウン」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。日本語ではその名の通り「冠」といって、虫歯が大きかったり、神経を取り除く治療をした歯に被せ物をする際の治療方法です。

一般的なクラウンは、下図のように歯を大きく削り、その上に銀歯(保険)やプラスチック(CAD冠:歯種によって保険適用)、セラミック(保険適用外)などを被せます。

それに対し、オーバーレイとは、下図のようにエナメル質を極力残した削り方をした歯に対し、薄いセラミックを被せる方法です。再度、歯のイメージ図を載せてみますね。

セラミックを使用する時点で、保険適応ではありませんが、歯をなるべく削らずに修復するためにはセラミックによる「接着」が必要であり、保険の材料(銀歯やCAD冠)ではそれは叶いません。

あまりに虫歯が進んでいたり、うちの母のようにすでに歯が大きく削られてしまっている場合は「オーバーレイ」はできないこともありますが、もし適応であるならば、ぜひ考えてほしい修復方法です。

まとめ

今年初めての雪がきっかけとなり、まだ若くバリバリだった母を思い出し、そしてそんな母も年老いて、当時の歯科治療のやり直しが続いていることから、今回の記事を書くことになりました。

やはり、歯を長持ちさせるには、なるべく歯(特に表層のエナメル質)を削らないこと。これにつきます。

もちろん、予防が徹底されて、治療すらしないで済むことが理想ではありますが、もし治療が必要になったとき、このような方法があることは、全ての方に知って欲しいと思います。その時、「保険が効かないから」という理由で、その方法を選ばないことは、もちろん自由です。しかし、歯科医師として、その方にとって最も理想的な方法がある場合、私はその方に「伝える努力」はしていきたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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