歯がすり減って短くなる!?Tooth Wearにご用心

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馬の歯も〇〇になる?

こんにちは。歯科医師の松浦直美です。

競馬評論家の細江純子さんという方を知ったのは昨年。

中学生だった我が家の末息子が、昨年大流行した「ウマ娘プリティーダービー」というコミックやアニメ(もとはゲームだったらしいが)にハマったのですが、そのアニメに「競馬評論家」としてキャラクター化されて出ていたのが細江さん。

日本の競馬界初の女性ジョッキーで、今は評論家として、競馬実況はもちろん、さまざまなメディアに出演されているようです。

そんな中、細江さんのコラムを覗く機会がありました。

https://news.netkeiba.com/?pid=column_writer_backnumber&wid=CH14

47歳になった細江さんは、体のケア(整体のようなものかと想像していますが)を毎月行っているそうですが、加えて、信頼できる歯科医に出会って、歯科への定期通院も始めた、という内容でした。

歯周病のケアと「エアフロー」に通う、という聴きなれた言葉が競馬コラムに出てきただけでも驚いたのですが、さらに驚いたのが、馬の歯の「すり減り」による弊害。

「馬も咀嚼によって臼歯が尖った形となり、舌や粘膜を傷つけカイバ食いなどが落ちる時があり、そんな時は獣医師さんがヤスリで平らに整えるのですが、年齢を重ねれば重ねるほど歯の大事さを痛感した」とのこと。

実は人の歯も、このように「すり減り」が進んできて、様々な問題を起こすことがあります。
しかし、馬のように長い時間奥歯で草をすりつぶしているわけではない人間の歯が、すり減ってしまう原因はどこにあるのでしょうか。

人間の歯がすり減る!「Tooth Wear」の怖さ

噛む面や、歯と歯ぐきの境目などの歯が削れてしまうことを「Tooth Wear(トゥースウェア):歯の摩耗」といい、その原因によってさらに何種類かに分類されています。

① 食べ物や飲み物の「酸」のとりすぎによって歯が解ける「酸蝕症(さんしょくしょう)」
酸の強いフルーツをよくかじる方、フルーツジュースや炭酸飲料、スポーツドリンク、赤ワインなどの酸性飲料をよく飲む方に起こりやすい。そのほか、見逃してはいけないのが「逆流性食道炎」による胃酸の逆流や、拒食症などで食べ物を吐き戻してしまう方。このような方には特徴的な強いすり減り(溶解)が見られます。

② 強い噛み合わせにより歯が削れる(咬耗)
歯軋り癖や、起きている時間の噛み締め癖、または噛み締めないまでも、いつも上下の歯を接触させている癖のある方は、歯の噛む面がすり減ってきます。顎の関節に影響して痛みや口の開け閉めが行いにくくなることもあります。先程のお馬さんの歯のすり減りは、この咬耗によるものです。

③ 間違った歯磨き、強い歯磨きによる歯の根元のすりへり
歯の根本は柔らかく、硬い歯ブラシで乱暴に横磨きを繰り返していると、根元が削れてきます。

④ アブフラクション(くさび状欠損)
②の強い噛み合わせと、歯軋りが同時におこってさらに強い力が歯にかかると、歯の根元が「くさび」のように鋭く深く削れてきます。③の歯ブラシによる欠損よりもくっきりと鋭い欠損が特徴です。

Tooth wear (摩耗)と「口元の見た目」の切っても切れない関係

上記でお話した通り、歯がすり減ったり溶け出したりする原因はさまざまではありますが、その特徴的なすり減り方から、原因の特定は比較的容易です。
あとは、必要に応じて生活指導や食事の内容を見直してもらうところから始めて、必要に応じてすり減り部分を修復します。

しかし、すり減りは奥歯だけではありません。見た目に大きな影響を及ぼす前歯のすり減りも、多くの方にみられる症状です

上の①番の酸蝕症や②番の咬耗などが重なって、前歯の裏側が薄くすり減り、さらには歯の先端が薄くなってかけてきます。

かくいう私の歯も、逆流性食道炎と、コーヒーや赤ワインの飲食習慣のため、上の前歯の裏がだいぶすり減って、歯の先はだいぶ薄くなって尖り、舌をぐるぐる回す運動などをすると舌に傷が着くほどです。

これ以上短くなると、スマイルの時に唇から見える歯の長さが減って老けて見えるため、セラミックの薄いベニアなどを貼って長さを回復させる治療を考えようかと思っています。(下図はAmerican Academy of Cosmetic dentistryのHPより)

このように、前歯のすり減りは主に飲食物による「酸蝕」と食いしばりなどの「咬耗」の組み合わせで進んでくることが多く、進んでくるとスマイルの外見にも大きな影響を及ぼします。

自分の歯が短くなっていないか。鏡をみて観察しよう。

時間をかけて少しずつ進む摩耗は、気づかないうちに歯が短くなったり、歯の先端が鋭くなったり欠けてきたりします。

口を少し開けた時、歯が見えなかったり(以前は見えていたのに)、明らかに前歯の先端がギザギザしているな、と思ったら、上記の原因がないか少しだけ考えてみましょう。わからなければ、かかりつけの歯科医院で確認してもらってください。

摩耗の兆候がみられたら、大きな修復をできるだけ先延ばしできるように、生活習慣を少しだけ、見直して行くところから、始めましょう。

短くなった歯は、本当に老けて見えてしまうため、要注意です!

 

 

 

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